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グラトニー・アント


森の異常がグラトニー・アントによって引き起こされ、その標的になっていることが分かったアレンはすぐに近くの岩が多い地帯へと向かった。


「アレン!なにか目的があってこちらに進んでいるのか!?」


アリスが少し苦しそうにしながら聞いてくる…他のみんなも苦しそうだ。あれから休憩なしで結構なスピードで来たからな、無理もない。


「この先を少し行くと硬い岩がゴロゴロある場所に出ます、そこに防衛に適した場所があります!なんとかそこまで頑張ってください!」


この先に天然の要塞がある、そこに入ってしまえば防衛するにはだいぶ楽なはずだ…それに地面が岩だから蟻が掘り進んでくることもない。

森の中では蟻たちの方が地の利がある…あのまま戦う訳にはいかなかった。

俺たちが向かっている場所は先ほどいた場所に比べ、高いところだ…なので先ほどいた場所が上から見えるんだが…すでに赤黒く蠢く蟻の様子を確認できた。


…なんとか間に合いそうだな。



アレンの誘導に付いていき、なんとか蟻の魔獣に囲まれる前に目的地に到着することに成功した。

休憩なしで険しい道のりを走ってきたのでみな、息も絶え絶えだ。


突いた場所は岩に覆われた天然の砦のような場所だった。入り口は小さく大勢で通ることは不可能、周りは巨大な岩で囲まれていた。


「この巨岩はスィール鉱石といって非常に頑丈で、表面が滑らかなため滑りやすい性質を持っています。ここにいれば大群一度に襲われることはないでしょう…それと念のために、【魔除けの結界】…よし、今回は気休め程度にしかなりませんがね」

「その結界ではダメなのか?」

「…グラトニー・アントの獲物を見つける力は非常に強力です。時間は稼げますが、おそらく見つかるでしょうね」

「そうか…やはり戦うしかないか」

「…ええ」


人間の味を覚え、かつ蟻たちに一番近い人間は俺たちしかいない…必ず見つかり戦うことになるだろう。

…正直、俺一人ならどうとでも戦かうことができるが、騎士団の人たちを守りながらは難しい…。


「あ、あの…なんとかこのまま逃げ切って森を出るわけにはいかないんですか?」


へたり込んでいたが、だいぶ落ち着いたんだろう…スタン君が言ってきた。


「このまま森を出て逃げてもあいつらは追ってきます…そうなった場合、危険に晒されるのは帝国全土になります…」

「そ、そんな…」

「…ここで我々が食い止め、倒すしかないということか」

「そうなりますね」

「アレン、あの魔獣はどうやったら群れを全滅させることができる?」


アリスに問われ、いくつかの方法をみんなに説明する。


グラトニー・アントの暴走を止めるにはようは女王蟻が死ねばいいのだ。

女王蟻を直接叩いて倒すのが一番分かりやすいだろう、その他にも兵隊蟻の数を一気に減らすことによって女王蟻への獲物の供給が止まり餓死させることもできる。なにかの方法で蟻全体を隔離し、獲物がなくなり全滅するのも待つ方法もある。


俺は考えうる方法をすべてアリスたちに話した。


「…現実的に実現できそうなのは直接叩くこと以外無さそうだな」

「えぇ…蟻の数を減らすには人数や火力は圧倒的に足りません、ましてや隔離も不可能です」

「うむ…しかし、この人数で兵隊蟻と戦いながら蟻の巣を見つけ、女王蟻のいる場所までいき倒すとなると…いささか厳しいか」

「そのことで提案があります」


アリスとダリウスさんの会話に割って入り、俺の考えを言う。


「…女王蟻討伐は…俺に任せてくれませんか?」

「それはっ…1人で倒しにいくと言うのかっ!」

「そうです…おそらくここにいる全員で行ったところで女王蟻には届かないでしょう」

「…アレン1人ならいけると?」

「…はい」

「…わたしたちは足手まといだと言うのか…」

「…正直に言うならこの場に限ってはそうだ、今回は迅速な行動が求められる…できるだけ人数は少ない方がいいし、俺ならこの森に詳しいから巣を見つけることだってできる」

「ならばっ!わたしだけでも一緒に!」

「いや…アリスはここでみんなと戦ってくれ…ここも必ず戦いになる、アリスが抜けた場合の戦力だと正直守りきれないかもしれない」


そう言うと騎士団のみんなの顔が悔しさで歪んだ…助けにきたつもりが逆に足手まといになってしまっているからだろう…しかし、ここで遠慮して本当のことを言わないわけにもいかない、みんなの命がかかっているんだ。


「くっ!…分かった…しかし!約束しろ!必ず生きて帰ってこい!」

「分かってる…アリスも…死ぬなよ」


話し合いの末、アレンの提案通り…アリスを含めた騎士団が天然の要塞で蟻たちの攻撃を耐え、アレン1人で女王蟻を叩く作戦に決まった。

そして刻一刻と赤黒い蟲が波と化してアレンたちへと近づいていた。



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