森の異常
手合せから数日、アリスの体調もさらに良くなり食糧等の確保もすみ、いよいよ帝国に向けて出発することになった。
「では、これから帝国に帰国する!各自、注意して進むように!」
「「「「はっ!」」」」
「アレンも…よろしく頼む、この森を一番知っているのはアレンだからな」
「あぁ、任せてくれ…森を出てからは逆に頼りにさせてもらうけどな」
「そこは心配しないでくれ!」
アレン、コハク、アリス…そして騎士10名が森を抜けるために出発した。
「森を抜けるまでは…おそらく3日ほどかかると思います、どこかで野営をする必要がでてきますね」
「森での野営か…危険そうだな」
「実際にアリーシャ様を見つけるまでの探索中、野営で襲われることもありましたから…油断は禁物かと」
俺、アリス、ダリウスさんが順に意見を言い合う。
しかし…食糧補給の時や出発してから森の様子を見ているが…なにかがおかしい。
俺の様子が変だったのか…アリスが声をかけてくる。
「どうした?アレン?」
「いえ…森に魔獣の気配が少ないと言うか…無いというか…とにかく接敵する確率が低すぎるんですよ」
「それは…我々にとってはいいことだが」
「ええ…そうなんですよ、このまま何事もなく森を抜けられればなにも問題ないんですがね」
「…一応十分に注意していこう…魔獣がいないならば今のうちに距離を稼ごう!」
「…ええ、コハク、周囲の警戒を頼む」
「ウォフッ!」
俺はいつもと違う森の様子に戸惑いながらも、このまま進むことにした。魔獣との接敵がなければ
その分進むスピードも速い。
…それでも不安をぬぐいきれない俺は、一応コハクに周囲の警戒を頼んでおく。
「ウォウッ!グルルルル…」
しばらく進むと警戒を任せていたコハクがうなり声をあげた。
「どうしたコハク?」
「グルル…」
コハクはしきりに一方向を見ている。
…その方向でなにかあるのだろう…確認しにいくか。
「アリス、一度コハクが警戒する場所を確認してくる。休憩がてらここで待っていてくれ」
「何人か付けるか?」
「いや、大丈夫だ…すぐに戻ってくる」
「了解だ、各自!小休止だ!」
アリスたちを残し、コハクと共に森の中を進む…なるほどコハクが警戒したのはこれか、森の中で濃い血の匂いがただよってきた。
匂いをたどってその場所につく…おびただしいほどの血が飛び散っていた、おそらく魔獣の血だ。
…魔獣同士で食い合ったのか?別に珍しいことではないが…この引きずっていった跡…周りには血だけで肉片等は散乱していない…うーん、どうもおかしい。
普通、魔獣は仕留めた獲物をそのままその場で食い散らかす…引きずってどこかに持っていくことなんてほとんど無いし、血だけ飛び散って食い散らかした後の体の一部がないのがどうもひっかかるな…。
…まるで狩った獲物をどこかに持っていかなければならないかのようだ。
「…とりあえずみんなのところへ戻ろう、コハク」
「ウォウ!!」
やはり今の森はなにかがおかしいと思いながら、警戒しつつみんなが待つ場所へ戻る。
念のため、隠密性を上げておこう。
アレンは意識的に気配を消し、魔獣に察知されないように森を走る。
アリスたちのところに近づくにつれ、アレンはスピードを上げていった。
その理由は…アリスたちの場所に魔獣の気配を感じたからであった。
「ちっ!人数が多い分、こっちが見つかったか!結界張ってけばよかったな!」
自分の不注意さを後悔しつつ、アリスたちへの元へと急ぐ!
その速さは隣を走るコハクに劣ることはない。
風のような速さで森を走り抜け、戦闘音が聞こえるところまで来たアレン…その目に映ったのは巨大な蟻の魔獣と戦うアリスたちの姿だった。




