回復
アレンがアリスの誘いに乗り、帝国に付いていくことが決まってから数日後。
「…うん、大丈夫そうですね、団長はご自分で体を動かしてみてどうでしょうか?」
アリスは毎日の日課になっているエイミーの診察を受けていた。
「痛みも特に無いし、もう動けるよ」
「ほぼ完治ですね!あと必要なのは…やはりリハビリでしょうか」
「しばらく寝たきりだったからな…腕が鈍っていないか心配だよ」
アリスが笑いながらエイミーに言った。
「どれ、ちょっと体を動かしてみようか…誰でもいいが、そうだな…ランディ!ちょっと手合せ願おうか」
「は、はいっ!」
捜索隊、前衛に配置されているランディさんが名指しで呼ばれた。
2人は少し間をあけて剣を構える。
アリスは剣を片手に切っ先を地面におろし自然体で…対するランディは両手で剣を持ち正面に構えている。
「遠慮なく撃ち込んでくるといい」
「はっ…いきます!しっ…はっ!!!」
アリスの言葉に従い、ランディがアリスへ走り寄り上段からの振り下ろしがアリスを襲う…剣筋もしっかりしていてなかなかに鋭い一撃だ、さすがに騎士として生活しているだけはある。
それに対し、アリスは…そのまま剣を下ろしたままだった…反応できない速度ではないが…やはり体長がよくないのだろうか。
手合せといえど、使っているのは真剣だ。当たったら怪我どころではない。
そう思い、ランディさんの振り下ろしを止めようか迷っていた時だった…ふいに風が吹く、その風はアリスから出ていた。
ギィィィン!!…
「くっ!…はぁぁーーーーー!!!」
アリスに当たるかと思った剣戟が風に弾かれる…否、風を纏ったアリスの凄まじいほどの速度で振るわれた剣で弾かれたのだ。速すぎて剣を下げたままに見える…。
振り下ろしを弾かれたランディさんはたたらを踏んだが、体勢を立て直し、今度は横凪を混ぜた連撃を放った。
ギィィン!ギィィン!ギィィィン!!
そのすべてがアリスに届くことはなかった…アリスがことごとくを弾き落としている。
「…風を剣に纏わせて剣速を急激に上げているのか…それだけじゃないな、風を体に纏い、風の流れを読んで感知に使っているのか」
「さすがですな…そのとおりです」
独り言のつもりだったのだが、隣にいるダリウスさんには聞かれていたようだ。
「アリーシャ様は風魔法を得意とし、それを己の体や剣に纏わせ、非常に高い近接戦闘能力をお持ちです。もちろん、そのまま攻撃型の風魔法として使用することもできますので、中距離戦闘もなんなくこなされます」
「…バランスが良く使い勝手のいいですね」
俺とダリウスさんが話している今も、ランディさんの撃ち込みをひたすら弾いている。
「ここまで風を使いこなせる方は他にいらっしゃいません。アリーシャ様の強さは全騎士団の中でも上位になります。だからこそ我ら第一騎士団の団長を務めてらっしゃるのです。風を使い、荒々しくも正確に敵の攻撃を弾き、風のように素早く敵を無力化することからついた二つ名が…【飄嵐】」
「はは、思ってたよりもアリスは強いんだなぁ~」
ダリウスさんの話を聞いているうちにランディさんの体力が尽きたのか、激しい呼吸とともに膝をついた。
「はー!…はー!…ま、参りましたッ!ぜーはー!!」
「うむ…ランディはもっと体力をつけろよ、もっと長く戦うことだって珍しくないのだから」
「りょ、了解です…しかし、ここまで撃ち込んですべて弾かれるのは団長の時だけですがねっ!!」
ランディさんにたいしてアリスがアドバイスをしている…結局アリスからは一度も攻めなかったな、まぁリハビリだからなのだろう。
「よし、体が温まったな…アレン!!」
「ん?」
ふいにアリスがこちらを振り向き俺の名前を呼ぶ。
「わたしと手合せ願おうかっ!!」
「……」
…そんな良い笑顔で戦おうとか言わないでよ。




