採取と狩猟
「お、これはちょうどいい大きさの鬼の芽だね、食べごろだ」
あたたかい森の中でひたすらに食糧を探す1人の人間の姿があった…アレンだ。
アレンは森を苦もなく歩きながら次々と食べられる木の実や山菜を収穫していた。
「さてと…けっこういろいろ採れたな、もう十分かな、ん?」
なにかの気配を感じて周囲を警戒する。
「これは…火熊かな?ちょうどいい」
「グオォォォ――――――――!!!!」
バキバキバキッ!!
アレンの前に木々をなぎ倒しながら赤毛の熊が現れる…体長はアレンの倍…4メトル近くあり硬質感がある体毛、鋭く伸び、紅く光沢のある爪が特徴の熊…否、魔獣であった。
「こいつの肉はそのままでも十分火が通ってて、そのまま食べられる…手間がはぶけるな」
アレンの身長は1,8メトル…倍近くある魔獣を目の前にしても余裕の表情だった、むしろ調理不要な都合のいい食糧としか見ていない。
「ググゥ!!ググゥ―!!…グゥオオオオオォォォぉー――!!」
様子見が終わったのか、魔獣…火熊がその体を更に赤くし四足歩行で突っ込んでくる、そのスピードと迫力は常人なら足が竦んで動けなくなっているだろう。
アレンは近くに樹を蹴り、火熊の頭上を飛び越え躱す…火熊はそのまま目の前の木々に突っ込むが平気ですべてをなぎ倒し、再度アレンに向き直った。
「ハハ!相変わらず初手で突っ込んでくるのは変わらないね!分かってれば躱すのは簡単だよ」
「グウゥー…フーフー!!」
アレンの言葉がなんとなく伝わったのか、先にもまして体を赤くする火熊、もはや体全体から火が上がっているように見える。
「よしよし、いい感じに肉に火が通ってそうだね…それじゃ悪いけど倒させてもらうよ」
「グオゥ!!グオオォ―――――!!!」
先ほどの突進よりさらに速くアレンめがけて突っ込んでくる火熊。
「…【土槍】」
「グオゥ!?」
アレンが一言つぶやくと火熊の目の前の土が隆起し、鋭い槍に変わる…火熊は身をひねって躱そうとするが…
「グアァァ!?…ガガガアアァァァァァアァァーーーーー!!!!??…ガ…ガ…アァ…」
突如、火熊の足が切られ回避行動をとれず…アレンが魔法で創った土の槍に自ら突っ込み事切れた。
「うん…これで食糧は確保できたね、そろそろ帰ろうか」
そう呟きながら火熊に手を当て…そして空間が歪み火熊の姿が消えた。
その時、風上から突風が吹いてくる…
「ん?なんだろ…魔獣の気配と血の匂い…それと、これは…人??急いだいいかな?」
なにかに気付き、アレンは家がある方向とは逆の方に向かっていった。