誤解と証明
剣を仕舞ったアレンはそのまま踵を返し、歩いて行こうとする。
「ちょっ…ちょっと待ちたまえ!保護しているとはどういうことだ!?」
その背にダリウスが困惑気味に声をかける。
「え?あぁ…数日前に崖から落ちてこの森で彷徨っていたみたいで…魔獣との戦いで傷を負っていたので俺の家で療養中なんですよ」
なんともなしに答えるアレン。
「き、傷だと…!大丈夫なのだろうな!?」
「ダリウス様!こやつの言う事が本当かどうかも分かりません!私たちを罠に誘い込むための嘘かもしれない!」
「…確かに、なにか証明できるものはあるのかね?」
そう言われてもな…なにかあったかな。
特になにかをアリスから預かったわけではないので証明のしようが…あ!!
アレンは空間魔法で1つの鐘を取り出す。
そうダリウスから貰った【真実の鐘】である。
「では、俺がこの鐘を持っているので好きに質問してください」
効果は元の持ち主であるダリウス自身がよくわかっているはずだ。
「いいだろう…ではまず初めに…お前は魔獣か?」
「…そこからですか、と言うかどんだけ人間に見えないんでしょうね、俺は」
若干落ち込むアレン。
「良いから答えろ!」
「はいはい、俺は魔獣ではありませんよ」
…………。
鐘は鳴らず。
「次だ…お前が保護した女性は生きているんだろうな?」
「生きていますよ、まだ動くほど回復していませんがね」
…………。
鐘は鳴らず。
「…最後に、お前は我々の敵か?」
「アリスの敵でなければ違いますよ」
…………。
鐘は鳴らず。
「いいだろう、信じよう…その鐘を一度こちらに渡してくれるかな?」
「?いいですが…」
鐘をダリウスの投げ渡すアレン、ダリウスはそれを受け取り手に持つ。
「私も証明しよう、質問するといい」
「…なるほど、そういうことですか…では、あなたは帝国の騎士ですか?」
「そうだ」
…………。
鐘は鳴らず。
「女性に…アリスに危害を加える者ではない?」
「そうだ、私たちは助けにきたのだ」
…………。
鐘は鳴らず。
「…わかりました、もう十分ですよ、信じましょう」
「感謝する」
「ではついて着てください、彼女のところに案内します」
「待ってくれ!」
今度こそ歩き出そうとするアレンを再度呼び止めるダリウス。
「…まだなにか?」
「…気絶した隊員が気が付くのを待ってもらえないだろうか」
「……あっ」
自分が気絶させた人たちのことを完全に忘れていたあれんであった。
「………ぷはぁぁぁぁ!?!?!?!げほっげほっ!?」
「よし、これで全員ですね」
気絶させた人を全員起こしたアレン。
「すごいな…気付け薬でもないのに、こんなにすぐ気がつくとは」
「この鬼百合の花弁をこすり合わせると強烈な匂いを発するんですよ」
「ほう、そんな植物が…」
「あ、あのダリウス様?なぜこの少年と?どういうことです?」
気絶していた人たちはさっきまで戦っていた少年と自分たちの隊長が普通に会話しているのを見て困惑気味だ。
気絶していなかったダリウス以外の3人によって説明がなされる。
「体が痛い方はいませんか?痛み止めもありますが…」
「…戦闘で俺らをのした奴が言う言葉ではないような」
「まぁそこはお互い様と言うことで」
「みな、エイミーにある程度治療してもらったから大丈夫だ、それに傷らしい傷もなかったようだしな」
「できるだけ傷つけないように気をつけたつもりだったんですが…良かったです」
「「「………」」」
笑顔で、あなたたちを傷つけないように気を付けて戦いました、と遠回りに言われて何とも言えない顔をする帝国騎士のみなさん。自分たちより年下の若いやつに手加減しましたよ~?と言われているようなものだ…苦い顔にもなる。
「では、今度こそ俺の家に向かいますね」
そう言ってアリスの待つ家へと歩いていくのだった。




