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アリスの思い


彼に命を救われて数日、不思議な食べ物で体の傷はすさまじい速さで治りつつある。

どれもこれも見たことがない食材ばかりで最初はとまどったが、味も非常に良く傷ついたこの体でもいくらでも食べられそうなほどだった。


彼に、アレンに半分冗談でわたしの専属料理人にならないかと提案したが、苦い顔で断られてしまった。非常に残念…あとでもう一度提案してみよう。


「しかし…彼は本当に何者なんだろうな、なぁコハク?」

「クゥン?」


アレンが森の探索に出ている間、怪我の療養をしているわたしは特にやることもないので思考にふけるしかなかった…考えることは主に騎士団のこと…そして命の恩人であるアレンのことだった。


今でも襲撃を受けたときのことを考える…

あれは魔獣の仕業なのか、それとも魔族が裏切ったのか…魔族が裏切るメリットはなんだ?魔獣は魔族にも関係なく襲い掛かってくるはず、人間種を裏切ったとして魔族だけでは対抗できないはずだ。

もし仮に魔獣をコントロール、もしくは強力な兵器、魔法の開発に成功していた場合、裏切る可能性はある。


魔族は昔、魔獣の一種だと考えられてきて虐げられた歴史がある…人間種に恨みを持っている魔族もいまだにいる。

復讐のために魔族全体で動き出しているとしたら…


「…だめだ、情報が少なすぎる。襲撃の件は国に帰ってからじゃないとどうしようもないな…」


そのためには一刻もはやく体を治し、動けるようにならなければ…ずっと動いていないのだからリハビリも必要になるだろう。

それに今のわたしの力でこの森を抜けられるかどうか…この森の魔獣は強力すぎる、少ししか戦ってないがその強さは身に染みて分かった。


「…アレンは、わたしに付いてきてくれないだろうか」


命の恩人アレン、この禁断の森に住む唯一の少年。

身長は…わたしより少し高いくらいだろうか、わたしも女性としては高い方だからなんだか新鮮だ。

髪の、そして瞳の色が深い群青色で…森の中に住んでることも相まってすごく綺麗にみえた。


そして彼の使う魔法だ。

彼はなにも無いところから剣を取り出した…つまりそれは空間魔法で収納していたものを取り出したということだ。しかも詠唱をしているようには見えなかった。

空間魔法を習得しているのは帝国といえど賢者の地位にある1人だけ…ましてや無詠唱で魔法を使える人など今まで見たことがなかった。


彼には戸惑うことは多い…魔法もそうだが、なにより慣れないのが女性扱いである。

わたしは第一騎士団の騎士団長だ、他の団員たちより強いせいであまり女性扱いされたことがなかったのだ…まぁ小さいころは過剰なまでに女の子扱いされたこともあったが、騎士団に身を置いてからはそういったことはなかった。


アレンに助けられてからは…戸惑う事ばかりだ。


「なぁコハク、お前の主人は…付いてきてくれないだろうか」

「クゥ…」


コハクの毛並を撫でながら呟くように言うのだった。



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