コハク
アリスが普通に食事をとれるようになった次の日。
「アリス」
「ん?どうしたアレン?」
「昨日、森の中で10人ほどの人がいた、もしかしたらアリスを追ってきたのかもしれない」
「…!!そうか、その…どんな風貌だった?」
少し期待を込めて聞いてくるアリス
「残念ながら騎士という恰好ではなかったよ、冒険者とか…悪く言えば盗賊団って感じじゃないかな?」
「…そう、か。」
「俺は一度接触してみようと思う、アリスを追ってきた敵にせよ、もっと情報が欲しいからね」
「いや、それは危険だ!万が一、今回の騎士団襲撃の犯人だったとしたら強力な魔法使いがいる可能性もある!」
騎士団が襲撃を受けた時を思い出しているのか、アリスは苦い顔をして俯きながら言う。
「大丈夫さ、見たところそこまで強くはなさそうだったし、危なくなったらすぐに逃げるよ」
「に、逃げ切れるとは言い切れないだろう?」
「ははは、この森の中を本気で逃げる俺に追いつけるのはそういないよ、コハクくらいじゃないかな?」
「ウォウゥ!!グルルル…」
そういってコハクの頭を撫でる…
コハクは気持ちよさそうに目を細める。
「そういえばこの狼の、コハクのことを聞いていなかったな?この子は狼…の魔獣で合っているよね?」
「ああ、そうだよ、俺が昔…瀕死だった小さいコハクを拾って助けたんだ、それ以来親代わりみたいになってね。ずっと一緒にいるよ」
「グルルルルル」
「本当によく懐いているな、種族は…なんだろう?影に潜むの能力から影狼かと思ったが…体毛が黒だけでなく、白が入っている、なにより影狼は複数で行動するうえにコハクほど大きくはない」
顎に手をやりながらコハクを見て考えている。
まぁパッと見ただけじゃ分からないのも無理はないんだけどね。
「…この子は混ざり者、混血なんだよ」
「混血!?そんなこと初めて聞くが…」
「俺もコハク以外には見たことがない…おそらくいても魔獣から迫害を受けていると思う、コハクがそうだったからね」
俺がコハクを拾ったとき、周りには影狼の姿があった。おそらくそいつらがコハクを殺そうとしていたんだと思う。自分と毛色の違う生き物を遠ざけるのは魔獣も同じだってことだ。
「コハクは影狼と…おそらくはソードウルフの混血だよ」
「ソードウルフっていうと…体長が2メトルを超える巨体に体から自由自在に刃を出して攻撃してくる魔獣か…非常に強力な魔獣だぞ」
そう、アリスの言う遠り、ソードウルフは強力な魔獣だ。
体は白く、巨体でありながらも狼特有のスピードを兼ね備えている、おまけに刃を自在に体に生やすことができ、そいつを振るって攻撃してくる。体毛も鋼のように硬く、生半可な攻撃では傷一つつける前に殺されるだろう、それほどの魔獣だ。
「コハクはソードウルフほど頑丈ではないが、それぞれの特徴を引き継いでいるよ。影狼の影に潜む能力、隠密性…ソードウルフに近しい巨体、刃を生やす能力なんかだね」
「…聞く限り暗殺に適しているような能力だな」
アリスが顔を引きつらせながら言うが、まさにその通りだ。
俺が魔獣を引き付けて、コハクが魔獣の影から飛び出し、首を撥ねるといった戦い方もしている。
「コハクは俺と一緒に成長したから人間種を敵とは思っていない、身の危険を感じたり俺がなにか言わない限りは人を襲うことはないから安心してほしい」
「ふふ、そこは心配していない、なにせすでに数日一緒にいるのだからな、時間にしたらアレンよりコハクとの時間の方が長いくらいだぞ?」
いたずらをするような顔でこっちを向いて言うアリスに、今度は俺の方が顔を引きつらせてしまった。
「…それはコハクに護衛を任せているから」
「冗談だよ!気にしないでくれ!少し年下の君をからかっただけだ」
嬉しそうに笑うアリスの笑顔は…とても美しく見えた。




