プロローグ3 改稿版
文章がだいぶ荒いですが大目に見てくださいませ。
宿屋の上階。
屋根裏ともいうべき物置小屋みたいな一室。
その中にポツンと置かれたベットにナールは身体を預けるようにダイブする。
「うぁー、今日はものすっごくつかれたぁ」
急に任された初の教育係の仕事は慣れないことばかりに思いのほか神経を使った。
新人として入ってきた子は終始睨んできてばかりで話を聞いているのかいないのかさえわからない。
(わかってくれてはいるんだろうけど、首で頷いて返事するんじゃなくって喋ってくれないとわからないんだよなぁ)
ずっと、相手はわからないときは首を動かさずわかったときだけ頷いてくれる。
そんな静かなコミュニケーションの取り方でやり続けて一日の仕事を終える形となった。
「明日から大丈夫かなぁ」
最終的には仕事のことを後輩に教えたというのをルーさんに報告した時。
『シェリー! ナールにすべて任せるってどういうことなんだい!』
休憩所でのんびり寝ていたシェリーさんに怒鳴り散らしていた声が館中に響いていた。
「まぁ、シェリーさんは自業自得だなぁ。しかし、やっぱりルーさんは怖い」
次第に瞼は重たくなっていき、眠りの中に落ちていった。
******
ドンドンという物音がかすかに聞こえ、目を覚ます。。
頭上にあるスタンド式のライトを点灯させて部屋に明かりを灯した。
ベットから足をおろして部屋の扉の前まで歩くとそこにはランジェリー姿のユイカさんがいた。
「ゆ、ユイカさん!?」
ユイカさんに強引に口元を抑え込まれるとそのまま部屋に戻されるように押し込まれる。
必死にその手を掴んで振り払う。
「そんな恰好で僕の部屋に何しに来たんですか」
胸が痛いほどに高鳴って苦しく興奮を抑えきれない。
「ちょっと、黙って」
「だ、黙って? は?」
あまりにもしごとぉ教えてあげていた時の態度とはまるで違う彼女の態度に驚愕する。
目の前の彼女を見ていると夜という淫靡な雰囲気に当てられているのか身体全体が熱を帯びたように熱く滾っていた。
落ち着くように部屋の隅にある申し訳程度にある机の上においてあった水を手にして飲んだ。
「あなたに話が合ってここに来たの」
「話?」
「そう」
「話って、なんか仕事に関することで分からないとかでもありましたか? それなら、明朝にでも教え――」
「それじゃあ、遅い」
「はい? 遅いって……そんな仕事に関してはゆっくりと覚えて慣れていけばいいことですから別にあわてる必要は……」
「誰も仕事のこととは言ってない」
「じゃあ、なんで……」
その時に彼女の視線が背後を見ていた。
ゆっくりと自分もその後ろを見る。
後ろは窓があるだけで、綺麗な月夜の出る夜空が見えているだけだ。
「今すぐ一緒にここから出る」
「はい?」
急に突飛でわけのわからないことを言う彼女に困惑をして次第に笑いしか出なくなった。
「あはは、何を言うんですか? 出るって……まるでここが危険な言い方をして……」
「ここはあなたにとって危険。あなたは飼いならされている」
さらに意味深な言葉をつづける彼女。
彼女の表情は緊迫感そのものでまるで錯乱した人が言ってるような言動ではなかった。
「飼いならされてるって僕がまるで奴隷にでもされてるかのような言い方ですね」
「私はそう言ってる」
「いい加減にしてください。何を血迷ってるのかはわからないですし、あなたにこの場所が危険に見えたのかもしれないですが僕は別にここに自分の意思でいるんです。ルーさんには命も救われた恩義があるんです」
「……完全に騙されてる状態にあるのね」
「っ!」
頭に来てしまい、彼女を突っぱねる。
「出ていってください」
「ま、待って私は警告をしているだけ」
「ルーさんには明日あなたのことは伝えておきます。あなたは仕事をここでする気はないと」
「いいえ、ナールその必要はないよ」
新たな人物、シェリーさんの声が部屋に響いた。
ビックリというよりもまるでこれから自らの身が殺されでもするかのような死を直面した絶望に満ちた表情を浮かべて背後を振り返るユイカ。
(なんで、この人こんなに取り乱す?)
彼女の肩をつかんでシェリーさんがにこやかに笑みを浮かべた。
「夜中にナールの部屋に入るのは禁止なのよユイカさん。それにしてもずいぶんと面白い話をしていたねぇ」
「離して」
「いいえ、ちょっと私とこの後じっくりと話をしないかしら」
「…………」
次の時、ユイカさんがシェリーの自らの肩を掴んでいた手をつかみ、柔道技のように彼女を目の前に投げ飛ばす。自らは部屋にあった窓辺に駆け込んで窓ガラスを突き破って外へと飛び出した。
「ユイカさん!?」
慌てて外のほうを見てみれば地面にうまく着地したのか傷一つなく、森の中に消えていく彼女の姿が見えた。
「いたたっ」
「シェリーさん大丈夫ですか!?」
「ええ。それよりも、ナール何を言われたの?」
「え」
一瞬だが、シェリーさんの目が赤く見え、自らの背筋が急に冷えて硬直した。
まるで蛇にでも睨まれた蛙のような気持ち。
「ただ、仕事が嫌だから一緒に逃げようって……」
どうしてか嘘をついてしまう。
「そう……。あの子に関してはママには私から話しておくわねぇ」
「はい……」
部屋の扉を閉めてシェリーさんはいなくなった。
「僕……どうして嘘なんかついたんだろう……」
あの時にユイカさんに言われた言葉も何度も頭の中で反響もした。
(飼いならされているか……)
足元に落ちた破片を見て、一枚の白い用紙に気付いた。
「なんだこれ?」
それはここにはなかった紙だった。
それを拾い上げて唾をのんだ。
『あなたは騙されている。私はあなたのことを知っている』
それはユイカさんからの手紙であった。
次は明日か明後日には掲載していきます。
文章の荒さは後に改稿をする予定です。どうか、それまでは大目に見ていただきたく思います。
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