うさぎロマネスク
今々、あるところに小さな男の子がいました。
その男の子は
お母さんぐらい
歳が離れている先生を
好きで、好きで
仕様がありませんでした。
男の子は先生と会えることを
一番の喜びとして
胸を太陽のように明るく
あったかくして
だから、NE、、
陽だまりのような学校に
通いました。
たとえば、39度の熱が出ていたとしても
お母さんには、嘘をついて
学校に向かうほどでした。
一目だけでも、大好きな先生を
見ることが、できたのなら
ようやく安心して
保健室で、倒れることができました。
先生も、男の子の気持ちを
知ってか知らずか
笑顔で振り向いてくれるのでした。
男の子は、次第に想像するようになりました。
先生とおたまじゃくしの国で
お姫様と王子様ごっこをしたり
公園で一緒に
砂遊びをしたり
ブランコに乗って
好きなだけ
おしゃべりをするのでした。
お家に帰れば
先生が出迎えてくれて
大好きな牛乳と
クリームシチューの晩御飯
トマトのスープ
デザートには
タルト・タタンを
作ってくれるのでした。
そんなある日のことでした。
突然、先生と会えなくなってしまいました。
それからというもの
男の子は
学校が終わると
家に帰らずに
見晴らしのいい丘で
一人ぼんやりと
空を眺めるようになりました。
ただ、ただ
眺めるようになりました。
何日も、何日も
眺めるようになりました。
丘にいた精達が
何日も男の子がぼんやりと
通ってくれているので
哀れに想い
男の子に、金木犀のフェアリーは
優しい語調で、語りかけました。
「ハル、ハル。どうやら、きみはひどく悲しんでいるよう、」
ハルは、つんとした唇に一度なってから、眺めていた雲を変えてみた。
「そうなのかな、それよ…り見てよ、あのクジラの尾っぽのような雲を。」
「ハルが見ている雲は、ぼくには見えないんだ。」
「ほら、また形を変えていったよ」
「そのようだね。ハル」
「ぼくはさ、」
突然少年の顔は、群青色に染まった。
「ハル、なんて愛しい子なんだ、ハル、ハル」
それからというもの
この世界は、ほんの少しだけ
しあわせな恋人が増えた、
増えたようなのです。




