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近道
22歳のあの頃
多くの友達が就職していくなかで
僕は無我夢中で
パステルカラーと重低音の夢を追いかけた
朝焼けが持っている本当の輝きに
ただ触れてみたかった
世界があまりにも美して遠かった
音のなかにある
青々とした森のなかを住まいとしていた
そして僕は不思議に感じた
黒いスーツ姿になっていく友達が
重宝され、賛美される社会を
僕は、あまのじゃくではなかった
ただ友達の笑顔に隠されている
責任と憂鬱な通勤電車のヴィジョンが
ビールの泡のように見えては消えた
僕は、恋に破れたこともなかった
愛を知らなかった
ただ僕にとっては、少なくとも
友達が言っていた近道ってものが
ひどく恐ろしいものに感じた




