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パリジェンヌ
パリジェンヌという
パン屋さんがそこにはあった
短い間だけど足繁く通った
通っているうちに
そのパリジェンヌから
「いつも、ありがとう。今日はこれだけでいいの?」
私は、一度も戸惑いを隠せなかった。
隠そうとはしている。
それでもね、、
だから、言った。
「このぐらいで大丈夫です。」
それから、いつものお決まりの
あれを食べた、、
それはクロワッサンかも知れない
クロワッサンなんて、、さ、
それから駅のホームで
茫然とバッハを聴いていた
Apple Music
地下鉄に乗っていた
あの子は、地下鉄に乗っていた
それから私は嗚咽した
抱きしめたくなかったから




