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EW.2018  作者: 水無月 和
1/1

4月1日 00:00 ~01:00

ブログ開設10周年記念として、何度書き始めても終わることのない、自称超大作『終わりなき戦い』の記念タイトル!

読者置いてけぼりで、『終わりなき戦い』シリーズの「2018年」を舞台に起こる異能力者たちのバトルを描いていきます。


これまで考えてきたキャラクターを全て登場させようとしてるので、これまで同様、途中で挫折する可能性は非常に高いですが・・・がんばります。

■2018.04.01 - 00:00



―――さぁ、祭りのはじまりだ。



■2018.04.01 - 00:01




 都内某所。


 歓楽街の明かりで、路地裏の闇は一層濃くなっている。

 その闇から、黒いコートを身に纏った女が現れた。

 深くかぶっていたフードを取り、夜空を見上げる。

 雲ひとつ無い空に街明かりで星は見えない。

 ニヤッと笑みをこぼすと、


「さて、久しぶりに愛弟子にでも逢いに行こうかしらね」


 そう言って、街へと足を向けた。



■2018.04.01 - 00:02



 都内のとある廃墟ビルの屋上。


 出雲鎮いずもまもるが一服していると、『りん・・・』と鈴の音のようなものとともに、巫女服を着た黒髪の少女がすぅーっと現れた。

「レイか?」

 鎮は振り向かずに、街を見下ろしたまま少女へ話しかける。

「うん。ねぇ鎮、気づいた今の気配?」

「あぁ、一瞬だったが、あれは魔法使い・・・おそらく四月朔日咲夜(わたぬきさくや)だ」

「四月朔日・・・4月1日になったばかりとはいえ・・・どうして今?」

「さぁな。だが、何かが起こると思って間違いは無いだろう・・・」

「うん、私もそう思う。でも、他の魔法使いの気配はないね・・・」

「他の魔法使いも戻ってきてるんだろうな。咲夜のあの一瞬の気配の消し方はかなりわざとらしい。気づける人間たちへの警告のつもりかもしれない」

「・・・なるほど」

 鎮はタバコを手摺りに押し付け火を消し振り返る。

「みんなに伝えろ、『祭りの準備をしておけ』と」

「了解」

 そう言うと、再び『りん・・・』と鈴の音のようなものとともにレイは姿を消した。



■2018.04.01 - 00:12



 都内近郊の高層マンション。

 真っ暗な部屋にバイブ音が鳴り響く。

 ちょうどバスルームから出てきた愛々(めめ)は端末を手に取り、

「何?」

 と、無愛想に応答する。

「おっと、機嫌が悪いな、J」

「休暇中に、しかもこんな真夜中に仕事仲間から連絡があって嬉しいわけ無いでしょ?用がないなら切るわよ」

「慌てるな慌てるな。仕事の話で間違いはないが、お前にとって嬉しいニュースだぞ」

「私にとって嬉しいニュース?」

「あぁ、()の反応をキャッチした。一瞬だったがな。運が良かった。ちょうど俺がモニタリングしてるタイミングでな。ありゃあ、俺じゃなきゃ気が付かないレベルの反応だった」

「・・・いつ?どこで?」

「13分前。喜べJ、お前の今居る、日本だ」

「このことはもう・・・?」

「いや、まだだ。言ったろ?俺じゃなきゃ気が付かないレベルだったって」

「ありがとう、D」

「あまり派手にやるなよ。この通話も記録されてないから安心しろ」

「今度、あんたの好きなものなんでも奢ってあげるわ」

「そいつは楽しみにしてるぜ」

 愛々はすぐに端末の電源を切り、服を着る。

 そこで、図ったかのようなタイミングで、ピンポンと短くチャイムが鳴った。

 枕の下に忍ばせてあるグロック17を腰へ差し込み、玄関へと向かう。

 のぞき穴から外見ると、そこには黒いコートを身に纏った四月朔日咲夜が手を振って立っていた。

 端末を切った段階で既にこうなることも予想していた愛々は、特に驚くことなくドアチェーンをつけたまま扉を開けた。

「久しぶりね、愛々」

 咲夜は微笑みながらそう言った。

「・・・どうしてここが?」

 腰の銃に手をかけながら愛々は訊く。

「おやおや、久々の再会なのに結構な挨拶ね」

「あれから、いろいろと状況が変わってね。残念だけど再会を喜ぶ言葉が見つからないわ」

「そうかい。とりあえず、中に入れてくれないかしら?まだまだ夜は冷えるわ」

 愛々は周りを警戒し、安全を確認して

「・・・いいわ」

 と短く返答し、ドアチェーンを外した。

 咲夜はニコニコしながら這入った。

「窓から入って驚かそうかとも思ったんだけどね、電話中だったから玄関に回ったの。それにしても良いマンションに住んでるわね。それと、魔術もかなり上達したようね。セキュリティの貼り方もなかなかスマートだわ。良い師匠に出会えたのかしら?」

「参考にした人は大勢いるけれど、基本独学よ。あれから3年も経てば、流石に上達するわよ」

「私が教えた2年じゃ碌な魔術も使えなかったけれどね」

「それは、あなたが本気で私に教える気がなかったからでしょ?」

「あら、気づいていたの?」

「当時は気づかなかった。独学で訓練をはじめて、ね。あなたに教わったことは基礎として確かに大事ではあったけれど、ほとんど実戦向きなものではなかった」

「そうね。ただ、それにはちゃんとした理由があるのは気づいているかしら?」

「魔術師ではなく、魔法使いに弟子入りをしたから」

「概ね正解。それをわかっているのならいいわ。ただ、あなたはまだ自分の才能に気がついて無いようね」

「・・・私の才能?」

「そう。まぁ、才能というか能力ね」

「私は魔法使いとしては無能よ」

「無能・・・ね。あなた、これまで魔術を使って疲れたことある?」

「・・・?私の魔術は、術式で自然や大気を媒介し発動するから疲れることはないわ」

「術式ベースでも、発動するには術者の魔力を少なからず使うの。魔力量が少ない人間は簡単な術式の魔術でもフルマラソンを走った後のような疲労感があったりするの。だから、魔術といえど誰でも簡単には使えるわけではないの。まぁ、魔力量の少ない人間はそもそもこの世界を知ることなく一生を終えるから、文献とかには載ってないことが多いから知らなくてもおかしくはないか。ちなみに、ここのセキュリティ、簡単な術式ではあるけれど、発動したら並の術者は魔力が枯渇して場合によっては死ぬレベルよ?」

「でもそれは、単に私が並の人間よりかは魔力を貯蓄しているというだけのことでしょ?」

「そう。ただ、あなたの魔力量は並の人間より遥かに多い。それどころか、私達、魔法使いよりも遥かに多いのよ」

「え、な?私が、師匠せんせいより?!そんなわけ―――」

「あるのよ。私があなたの前から姿を消したの理由の一つがそれよ」

「・・・・・・」

「私が最初、あなたの弟子入りを拒んだ理由でもある。弟子を取らない主義というのはあったけれど、あなたの能力に気がついた私は、それを開花させてはならないと考えていたから」

「でも、結局あなたは私を弟子にした。弟子にせずにその時姿を消すことも出来たでしょうに」

「あなたの執念に根負けしたのも少なからずあるけれど、秘匿しておくのではなくコントロールしようと考え直したからよ」

「それで、実戦向きではなく、魔力のコントロール重視の訓練を?」

「そう、2年ほど経ってあと数年続ければ問題ないと判断して、私は他にやらなければならないこともあってあなたの前から姿を消した」

「残念ながらあなたの弟子は約束を破り、独学で実戦向きな魔術の訓練を始めた」

「そう。でも、あなたは魔法ではなく、魔術の訓練を始めたから特に問題視はしていなかった。無害判定も受けていたし、ちょっとやそっとでは他の人に気づかれる心配もないだろうと」

「じゃぁなぜ、今になって戻ってきたの?なぜ今その話をするの?」

「あなたのその能力を狙う者が現れ、それに対抗するには、あなたのその能力が必要だからよ」

「・・・そいつは何者?一体、何が起こるというの?」


「近々、"魔女狩り"が始まる」



■2018.04.01 - 00:31



「やっと見つけたぞ」

 沖縄本島の最南端で海を眺めていた水無月真奈美(みなづきまなみ)に、鎮がため息混じりにそう話しかけた。

「やっとって、別に隠れてたわけじゃないんだけど?」

「都内に居ると思ってたからな、まさか沖縄にいるとは思わなかった」

「そんなこと言って、どうせ1時間も探してないでしょ?」

「まぁ、2、30分ってところかな」

「ほらね。東京にいると思っていて、沖縄にいるのを見つけるのに2、30分って早すぎよ。私が吸血鬼見つけるのに何年掛けたと思ってるのよ。・・・で、わざわざあんたが来たってことは急ぎの仕事かしら?」

「急ぎってわけではないが、早めに耳に入れといてもらいたくてな。近々『何か』が起こるかもしれないから、備えておいてくれ」

「・・・・・・は?そんなのいつものことじゃない?その『何か』ってのは相当ヤバそうなわけ?」

 真奈美はキョトンとして訊き返した。

「魔法使い絡みの可能性が高い」

「ふーん・・・、魔法使い、ね。私、魔法使いと絡んだこと無いからピンとこないんだけど・・・吸血鬼よりヤバイの?」

「そうだな・・・魔法使いのその時の状況、状態とかもろもろによって変わってくるが、黒の真祖と魔法使いのトップが互いに最高のコンディションであった場合・・・魔法使いのほうが圧倒的にタチが悪い」

「黒の真祖の最高のコンディションを想像もしたくないんだけど・・・それよりヤバイってかなりヤバイじゃない」

「できれば関わりたくない連中だ」

「じゃぁ、抛っておけば?」

「見てみぬふりをして巻き込まれたらそれこそ面倒くさいだろ?」

「まぁ、それもそうね」

 真奈美は肩をすくめながら、

「とりあえず了解。いつもよりかは多少警戒しながら過ごすことにするわ」

「で、だ。お前には一つ頼みたいことがある」

「・・・すでに断りたいけど、何?」

「六月一日愛々を影から警護してもらいたい」

「うりはり・・・めめ?聞き覚えがあるような、無いような。誰だっけ?」

「"無能の魔法使い"、四月朔日咲夜の弟子だ」

「あんた・・・台風の目に入っとけって言うわけ?」

「台風の目だと、平和だな。暴風域だな」

「私を都合のいい女扱いしてない?」

「そんなことはない。俺の持つ数少ないカードで、お前がぶっちぎりで最強だからな」

「嬉しくないわ、それ。そうだ、紅葉は?紅葉に頼みなよ」

「あいつは足枷があるだろ。じゃ、そういうことで頼んだぞ。あと2~3箇所行くところがあるんだ。お前にこんなに時間かかるとは思ってなかったんでな」

 そう言うと、鎮はスタッと飛んで姿を消した。

「やっぱり、都合のいい女扱いじゃない」

 真奈美はその姿を見上げながら、そうぼやいた。



■2018.04.01 - 00:51


 東京郊外にある寂れた商店街。

 その中にある、今にも潰れそうな古本屋の2階。12畳の広間に異常者によって構成された非正規特殊部隊『Psychopathyサイコパシー』のメンバーが揃っている。


「で?結局、『祭りの準備』ってのは何をしたら良いわけ?」


 春野桜はるのさくらはレイに食って掛かかるように言った。

「どう聞いても戦闘準備だろ?」

 レイよりも先に、鬼村殺喜きむらさつきが応えた。

「だから、どこの誰ともわからない相手に、何をどう準備したら良いのよ?わたしたちは異常者であって、異能力者じゃないんですよー?そんな、りんりんしゃんしゃん鳴らして、幽霊みたいにひょっこり現れたり、超サイヤ人なんかに変身したりできませんよー」

「それは言える。鎮さんはそこらへんわかってないんじゃないの?」

 夏野空なつのそらも桜に賛同する。

「異常者が、わりとまともなことを言っている件について」

 部屋の隅でぼそっと冬野風ふゆのふうが呟いたが、全員がそれを無視して話を進める。

「数年間姿を消していた魔法使いが現れたことが、何かの前触れって言いきるのは些か早計なんじゃない?」

 秋野香あきのかおりが手をひらひらと上げて発言する。

「それは、俺も思う。」

 桐生切継きりゅうきりつぐも香のマネをしてひらひらと手を上げながら言う。

「でもさ、これだけの存在感を持つ魔法使いが突如として姿を消して全くと言っていいほどこれまで痕跡を掴ませなかったのに、それが今日突然現れたのなら、何かが起こるかもしれないと考えるほうが普通じゃない?」

 四季崎廻しきざきめぐるも二人のマネをして、手をひらひらさせながらレイをフォローするようなことを言う。それに対し、桜がすぐに応える。

「普通じゃない?だって、めぐりん。わたしたちフツーじゃないもーん」

「・・・そうだったわね」

「最近、出番が無いからって、自分たちが異常者であることを忘れるなんて、クビになっちゃうよ~?」

「戦闘準備っつても、俺らはいつもどおり待機しときゃいんじゃね?必要となれば出動命令が来るだろ?もしくは、いつもみたいに気がついたら巻き込まれてんだろ?いつだって"何か"は起こり得るんだからどうでもいいだろ。今回は単に、異能力者絡みで何か起こるかもしれないことを前もって知れただけの事」

「殺喜の言うとおりね。心のどこかに止めておいて、いつもどおり過ごしときゃいいわね」

「なーんか納得行かないけど、それでいいや~。眠いし」

「まとまったところで、私は失礼します」

 レイは、そそくさとまた鈴の音のような音とともに姿を消した。

「はーい、解散解散。みんなおやすみー」

 レイが消えると、桜もそう言って自分の部屋へと戻っていった。

 それに続いて、他のメンバーも自室へ戻っていく。

「なぁ、リーダー」

 殺喜が部屋から出ようとして、足を止め、最後に部屋に残っていたナナシへ声をかけた。

「お前が無口なのはいつものことだが、ああいうときはお前がまとめるものじゃねーのか?」

「僕はてっきり、桜がレイをからかって遊んでいるのかと思ったから何も言わなかった。魔法使いに関しても、"お友達フレンド"に頼んで"何者か"を探してもらうと考えていた」

「本当にお前はしゃべらないだけでちゃんと考えていやがるな。どうせ、俺が収めるとこまで計算ずくか?」

「まぁ、概ね。あんたか四季崎が収めるとは思ってた」

 殺喜はチッと舌打ちして部屋を出ていった。


紅葉くれはにも伝えておこうかしらね」


 誰も居なくなった部屋で、ナナシがひとり呟いた。

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