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ラスト・ダンス

作者: 鬼火

 この踊りが終わったら

 私はあなたの前から消えるでしょう

 そんな悲劇をご存知で?


 音楽を聴きましょう、せめてご一緒に

 めくるめく旋回に身を委ね

 燃ゆる手と手を重ね合わせたら

  一つの影法師ができそうね


ご覧なすって

陽炎よ


 さながら私たちは晴嵐に迷い込んだ橘よ

 この沈痛な酩酊のさなかに何を思い出すのでしょう?

 あなたの瞳の碧さが憎いのか

 冥界深くまで覆うてしまう薄氷(うすらい)のまぶた

 それがこうもさかしいのが口惜しいのです


 音楽は中盤よ、もっと堕ちましょう

 青白い煙はいらないわ

 阿片よりも離れがたく忘れがたい、あなたの白すぎる御胸と、そこにひっそりと落ちる肉体の陰翳

 隠顕するそれらが私を惑わしているのを、きっとご存知なのでしょうね


 月のような瞳が燦爛と盈虚する

 その刹那のミラーボールの空々しさ?


 稚木のような脚が今にも折れそうよ

 でも大丈夫、また芽が出るわ


ご覧なすって……

陽炎よ!


 音楽がもうすぐ終わります

 二人には激しすぎるダンスを踊りましょう

 狂おしく髪を振り乱して踊りましょう

 あなたの御髪が図らずとも顔を覆うて消えて、覆うて消えて、さながら仮面のようです


 私は忘れないでしょう

 神の子と踊ったことを



 音楽が穏やかに終わった

 あなたは発条が切れたように死にました

 あなたの発条を、私がいただいたのです

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