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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
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末裔

「さぁ。ここが私の家です」


 思わず僕、ケイさん、そして、番田さんは言葉を失ってしまった。


 今まで北地区に存在していたのか、と思えるほどに巨大な屋敷……その屋敷こそ自分の家だと灰村は言ったのである。


「どうぞ、付いてきて下さい」


 灰村はそう言って家の中に入っていった。


僕とケイさんは思わず番田さんを見る。番田さんも少し戸惑っていたようだったが、そのまま家の中に入っていった。


「……よし。行こう」


 ケイさんも決意を決めたようで、そのまま屋敷の中に入っていった。僕もその後に続く。


 実際、屋敷の中は北地区とは思えないほど、美しい庭が広がっていた。


 手入れの行き届いた感じからして、灰村は本当にここに住んでいるらしい。


「……他の人は、いないのか?」


 番田さんがそう訊くと、灰村は庭を眺めながら回答する。


「いますよ。出てこないだけです。今もアナタ達を見ています」


 不吉なことをさらっという灰村。


確かにどこからともなく、何者かの視線を感じる……しかし、周りを見渡してみても、誰かの存在を確認することはできなかった。


「さぁ、どうぞ、家の中へ」


 いつの間にか玄関までやってきていた。


 僕達3人は言われるままに扉が開かれた玄関の中に入った。


 屋敷の中は……薄暗かった。どこまで続くかわからない廊下が奥のほうにつづいている。


「おかえりなさいませ。お嬢様」


 と、どこからか低い声が聞こえてきた。


 見ると、玄関先には年配の小さな老人が立っていた。


「ああ。爺や。連れてきた。人数分のお茶」


「……かしこまりました」


 灰村がそう言うと、老人は家の奥の方に入っていった。


「ウチの使用人です。お爺ちゃんの代から使えてて……そろそろ90歳くらいですかね」


「……なるほど。確かに、アナタは白神村の村長の一族の末裔のようですね」


 番田さんがそう言うと、灰村は少し不機嫌そうに番田さんを見る。


「酷いですね。疑っていたんですか?」


「いえ……それはいいとして、さっそくお話、聞かせていただきたいのですが」


 番田さんがそう言うと灰村はようやく思い出したようで、ポンと手を叩いた。


「そうでしたね。では、行きましょう」


 灰村はそう言って、廊下の奥へ進んでいく。番田さんもその後に続く。


「僕達も行こう……ケイさん?」


 と、ケイさんの方を見ると、ものすごく不機嫌そうな顔で辺りを見回していた。


「どうしたの?」


「……この屋敷……ヤバイよ。マジで」


「え……ヤバイって?」


 すると、ケイさんは小さくため息をついてから僕の方を見る。


「……あの女を見ればわかるけど……この村長の一族、あんまり性格が良い一族じゃなかったんだってこと」


「え……それって……」


「とにかく、行こ。さっさと話終わらせて、こんな場所、おさらばしたいし」


 そういってケイさんも廊下の奥へ向かっていく。僕もそれに続いて薄暗い廊下の奥へと進んでいったのだった。

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