表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
97/200

真意

 それから北地区を暫く歩く。相変わらず何か異様な気配を感じる。


「黒須君。ダイジョブ?」


 と、ケイさんが話しかけてきてくれた。僕は小さく頷く。


「うん……どうやら、旧白神神社とは別の方向みたいだね」


「ありがたいことにね。あそこには……私でも、あんまり近づきたくないからね」


 ケイさんは苦々しい顔でそう言う。


 白神さんの呪いを退けたケイさんでさえも入りたくない場所……今の旧白神神社がどういう存在かは理解できた。


「あなた方は、どこまで知っているんです? 白神村について」


 ふと、灰村が誰に向けてでも無く話しかけてきた。僕達は思わず番田さんのことを見てしまう。


「……どこまで……八十神語りという儀式があった地域、という認識しかありませんが」


「あはは。そうですか。私は……ちょっと違います。八十神語りにしか頼れなかった地域、という認識ですね」


 灰村はそう言って足を止め、周りを見回してみた。


「……南側だって、そこまで繁栄しているわけでもない。でも……白神村は本当に何もない場所だった。お爺ちゃんは言っていました。何もない場所だったからこそ、八十神語りを行うことができたんだ、と」


「……アナタは、八十神語りがどういうものか知っているですよね」


「ええ。しかも、アナタ達異以上に。それでも、そんな奇怪な儀式に頼らなければならなかった……お爺ちゃんや、私の祖先がどれだけ苦労したのか、なんとなく分かりますね」


「ですが……アナタは、そんな八十神語りを自身の興味だけで復活させ、何の罪もない少年少女を巻き込んだ……分かっているんですか?」


 番田さんの口調はいつもよりも少しキツ目だった。しかし、灰村は分かっているのかいないのか、曖昧な笑顔で番田さんを見る。


「……さぁ、私の家まで後少しです。そこで、八十神語り……ひいては、白神村のことについて、きちんとお話しますよ」


 そういって、灰村はまた歩き出した。


「……番田さん、あの人は……」


「……おそらく、本気ではないだろうな」


「え? それって……」


 番田さんはそう言って、僕のことを見る。


「……私達にこれ以上首を突っ込むな、といったのはただの口実だ。むしろ、私達に八十神語りの真実を教えようとしている……私にはそう思える」


「えー? でも、せんせー。そんなことしてどうするのよ?」


 ケイさんも理解できないようだった。同じく、僕もなぜそんなことをするのか……イマイチよくわからない。


「さぁ……つかみ所のない人物のようだからな。とにかく、彼女に付いて行くしか無いだろう」


 番田さんはそう言って歩き出した。僕とケイさんもそれに続いて今一度歩き出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ