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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
95/200

原因

 灰村の後をついて、僕達3人は歩いた。


 歩いている最中に気付いたのは……灰村が北地区に向かっているということだった。


 北地区……旧白神神社があった、人が住んでいないはずの地域だ。


 そんな所に行くということ自体、異様なことに思えるが……


「灰村さん。アナタの家は、北地区にあるのですか?」


 番田さんがストレートにそう訊ねた。灰村は立ち止まり、番田さんの方を向く。


「北地区? ああ。そう呼んでいるのですね。アナタは。私にとっては、あちら側が白紙町でして……この南側の地域は、オマケにしか過ぎません」


「オマケ? つまり、未だに北地区は機能しているのですか?」


「いえいえ。そんなことないですよ。住んでいるのは私とその一族だけです。後はボロ家や廃墟だけですから」


 ここで明確に、灰村は未だに北地区に住んでいることがわかった。あんな異常な場所に住んでいる……ケイさんが言っていた白神さんのような気配とはそのことに起因するのかもしれない。


 それからは何も喋らずに、僕達はひたすら北地区を目指した。そして、十分ほどでまたしても境界の部分にやってきた。


「見てください。これ」


 そういって、北地区との境界にあるお地蔵さんを、灰村は指差す。


「これが白紙町とオマケの地域の境界を示す存在です。こんな小さなお地蔵様だけで、そんなことができると思いますか?」


「……どういうことですか?」


 番田さんが怪訝そうにそういう。すると、灰村は今度は道の反対側……何も無い場所を指さす。


「実は、あそこにもお地蔵さんがあったんですよ」


「……はぁ!? ちょ、ちょっと待ちなさいよ! マジで言ってんの!?」


 その瞬間、ケイさんが大声で叫んだ。ケイさんの表情は僕が少し驚いてしまうレベルに鬼気迫るものだった。


「……なんですか。うるさいガキですね」


「言わなくてもわかるわよ! アンタ……そのお地蔵さん、どこにやっちゃったのよ!?」


「ああ。別の場所に移したんです。私が一族に頼んで」


 その言葉でケイさんは大きく肩を落としてしまった。僕は何が何だがわからないままにケイさんと灰村を交互に見る。


「……灰村さん。それは……不味かったのではないか?」


 番田さんが気まずそうな顔でそういう。


「ええ。そうでしょうね」


「は? もしや、アナタ……」


 番田さんが怪訝そうに訊ねると、灰村はニッコリと微笑む。


「ええ。分かっていましたよ。こんなことをすれば、白神さんが……しばらく途絶えていた八十神語りが、復活することくらい」

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