警告
「……なるほど。そういうことか」
番田さんが1人で頷いている。僕はただ今一度、おかっぱ頭の女性を見ていることしかできなかった。
この人のお爺さんは白神村の村長だった……そして、その村長こそが八十神語りを神社に行なわせてきた……
唐突に明らかになった事実に、僕はいまいち理解が追い付いていなかった。
「へぇ。じゃあ、アンタが黒幕なわけ?」
と、ケイさんが不躾に灰村に訊ねる。灰村は相変わらずの笑顔のままでケイさんの方を見る。
「申し訳ないのですが……私、番田さん以外のガキとお話するつもりはありません。ああ、もっとも、白神さんに選ばれたガキとはお話しますが……」
「はぁ? 何? アンタ、喧嘩売ってんの?」
ケイさんが眉間に皺を寄せてそういう。しかし、灰村は全く動じない様子だった。
「やめるんだ。ケイ君」
番田さんにそう言われると、ケイさんも何も言えなくなってしまったようだった。
「ふふふ。すいませんねぇ」
まったく反省していない様子で灰村はそういう。そして、番田さんの方に顔を向けた。
「まぁ、そういうことですから。私がここに来た意味、わかりますよね?」
「……もし、アナタの言うことを拒否すれば、どうなるんだ?」
番田さんは鋭い視線でそう言った。
すると、灰村はキョトンとした顔で番田さんを見たが、すぐにニコニコとした気味の悪い笑顔に戻った。
「そうですねぇ……こんな寂れた喫茶店ではなんですから、私のお家でお話しませんか?」
そう言うと、灰村は立ち上がった。番田さんはそれに続いて立ち上がる。
「……ケイさん」
思わず僕はケイさんの名前を呼んでしまった。
先程の件で明らかに機嫌が悪そうなケイさんは、未だに灰村の後ろ姿を睨んでいる。
「アイツの言うこと……マジだと思う」
「え?」
ケイさんは忌々しげにそう言った。
「……アイツは……白神と同じ感じがするから」
「え……そ、そうなんだ……」
ただ、僕としては、白神さんよりも邪悪な……なんだか嫌悪感を覚えさせるような感覚を、灰村は醸し出しているように思えた。




