ウシロガミ様の話
その少女は、とても気立てがよく、村でも評判の女の子だった。
しかし何よりもっとも彼女の評価をあげていたのは、その長く美しい黒髪だった。
彼女自身もその髪のことを自慢にしていたし、いつも丁寧に扱っていた。
ある日、彼女は神社にお参りに行った。
すると、お参りをすませると同時に、なんとなく、後ろに誰かがいるかのような感覚を覚える。
少女は気のせいだと思ったんだが……どうにもその感覚は消えてくれない。
仕方なく、神社から帰ろうとすると、いきなり誰かに後ろからグイッ、と髪の毛を引っ張られる感覚に襲われた。
少女は驚いて咄嗟に後ろを振り返る……だが、もちろん、後ろには誰もいなかった。
恐怖しながらも少女は家に帰った……しかし、家に帰ってからもなぜか背後に誰かの存在を感じてしまう。
そして、何度も何度も少女は自分の髪が引っ張られるのを感じた……
少女はその日、眠ることができなかった。
なぜって、眠っていても、背中から誰かに髪の毛を引っ張られるんだ。
それから数日間、少女はその現象に悩まされた。
さすがに少女も辟易としてしまって、随分と窶れてしまった。
自慢の黒髪は、先端が縮れてしまって、酷く残念なことになっていた。
それでも、少女の髪の毛を引っ張る現象は止まない……さすがに少女は我慢できなくなって、自分の髪の毛を思いっきり切ってしまった。
すると……どうだろう。途端に少女に対する不可思議な現象は終わった。
少女は切った髪の毛を神社にお供えしたのだ。
それと同時に、ピタリと少女の髪の毛は引っ張られなくなったんだ。
ウシロガミ様も髪の毛を渡してもらって満足したんだろうね。
それからというもの、村では年に1回、神社に若い女の子の髪の毛をお供えする風習が出来た。
これがウシロガミ様の話。