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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第五神
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死への笑い

「……終わり、ですか?」


 ワラガミ様の話が終わった……なんとも嫌な感じだった。


「ええ。終わりですよ」


 貼り付けたような笑顔で僕にそう言う琥珀……僕は思わず目を逸らしてしまう。


 そして、ケイさんのことを見る。


「ケイさん……大丈夫ですか?」


 ケイさんはなぜか呆然としている。ジッと僕のことを見ているのか、それとも琥珀のことを見ているのか……判然としない表情だった。


「……ケイさん?」


「……ひひっ」


「え?」


 ケイさんは何か小さく笑い声をあげたように聞こえた。


 しかし、なんだかおかしかった。


 僕は今一度ケイさんのことを見る。


「……ケイさん?」


 僕が今一度ケイさんに声をかける。


 するとケイさんは視線を僕に向ける。


 そして、次の瞬間――


「ひひっ……あはははははははははは!」


 ケイさんは……急に笑い出した。


 何が面白いのかわからないが、とにかく急に笑い出したのである。


「け……ケイさん?」


「あはははは……ひひひ……あはははははははははは!」


 まるで壊れてしまったかのようにケイさんは笑い続けている。


 というよりも、どう考えてもおかしい。


「……琥珀!」


 僕は琥珀の方に振り返る。琥珀は目を細めて僕のことを見ていた。


「どうしました? 何か問題でも?」


「も、問題って……ケイさんが……」


 すると、琥珀は勝ち誇ったような表情で笑い続けているケイさんを見る。


「フフッ……よっぽど、賢吾といられることが嬉しかったんですね。いいことじゃないですか。笑うことは。そのまま……死ぬまで笑い続けて下さいね」


「こ、琥珀……君は……!」


 すると、またしても一陣の風が吹いた。


 再び目を開けたその時には、目の前の琥珀は既に姿を消していた。


 既に琥珀の仕業だということは理解できた。僕は今一度ケイさんのことを見る。


「あひゃひゃひゃ……ひひっ……」


 涙を流しながら、笑い続けるケイさん。


 僕は初めて信じられないほどの恐怖を感じた。


 そして、自分がケイさんを巻き込んでしまったということを。

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