死への笑い
「……終わり、ですか?」
ワラガミ様の話が終わった……なんとも嫌な感じだった。
「ええ。終わりですよ」
貼り付けたような笑顔で僕にそう言う琥珀……僕は思わず目を逸らしてしまう。
そして、ケイさんのことを見る。
「ケイさん……大丈夫ですか?」
ケイさんはなぜか呆然としている。ジッと僕のことを見ているのか、それとも琥珀のことを見ているのか……判然としない表情だった。
「……ケイさん?」
「……ひひっ」
「え?」
ケイさんは何か小さく笑い声をあげたように聞こえた。
しかし、なんだかおかしかった。
僕は今一度ケイさんのことを見る。
「……ケイさん?」
僕が今一度ケイさんに声をかける。
するとケイさんは視線を僕に向ける。
そして、次の瞬間――
「ひひっ……あはははははははははは!」
ケイさんは……急に笑い出した。
何が面白いのかわからないが、とにかく急に笑い出したのである。
「け……ケイさん?」
「あはははは……ひひひ……あはははははははははは!」
まるで壊れてしまったかのようにケイさんは笑い続けている。
というよりも、どう考えてもおかしい。
「……琥珀!」
僕は琥珀の方に振り返る。琥珀は目を細めて僕のことを見ていた。
「どうしました? 何か問題でも?」
「も、問題って……ケイさんが……」
すると、琥珀は勝ち誇ったような表情で笑い続けているケイさんを見る。
「フフッ……よっぽど、賢吾といられることが嬉しかったんですね。いいことじゃないですか。笑うことは。そのまま……死ぬまで笑い続けて下さいね」
「こ、琥珀……君は……!」
すると、またしても一陣の風が吹いた。
再び目を開けたその時には、目の前の琥珀は既に姿を消していた。
既に琥珀の仕業だということは理解できた。僕は今一度ケイさんのことを見る。
「あひゃひゃひゃ……ひひっ……」
涙を流しながら、笑い続けるケイさん。
僕は初めて信じられないほどの恐怖を感じた。
そして、自分がケイさんを巻き込んでしまったということを。




