表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第五神
85/200

ワラガミ様の話

 その夫婦は村でも有名なおしどり夫婦でした。


 寡黙で夫に尽くす妻……傍から見れば幸せそのものでした。


 しかし、男は妻が寡黙なのをいいことに、家の外に女を作っていました。


 男は家にロクに帰ってこない日が続きますが、妻は黙って夫の帰りを待ちました。


 妻はこう思っていたそうです。


 自分より他の女といた方が幸せならば、それでいいのだ、と。


 それならば、せめて男と、一緒にいる女にはずっと楽しく笑っていてほしい。


 笑顔がずっと続けばいいと、祈っていたそうです。


 実際、男は寡黙な妻といるより、家の外に作った明るくて気立ての良い女を好みました。


 女はいつも男といると下品に笑います。それは楽しそうに……


 ある夜。同じように男はその女と家の外で遭っていました。


 すると、なぜか女は男のくだらない話をきっかけに大笑いしました。


 男がなぜそんな笑うんだと聞いても、女はずっと笑い続けています。


 段々と気味が悪くなってきた夫ですが、女はそれでも笑い続けています。


 それこそ、楽しくて幸せで仕方ないというように……


 結局、女はその晩からずっと笑い続けるようになってしまいました。


 寝ることも出来ず、食べることもできず、延々と笑い続けます。


 そのうち女は酷くやせ細り、不気味に笑い続ける女を村の人はおかしな奴だとして放っておきました。


 それから数日後、女は笑いながら死にました。


 その死体を見た男はなぜかふいに笑い出してしまいました。


 皆に怪訝そうな顔で見られても、男は笑うのをやめません。


 というよりも、止められませんでした。


 その時、男は見たのです。そして、理解しました。


 壊れたように笑い続ける自分を見て、不気味に嬉しそうに微笑む自分の妻の姿を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ