臨戦態勢
「ケイさん……どうしたんですか? その格好」
「ん? ああ、まぁ、臨戦態勢、ってやつかな?」
白神神社に行く道すがら、僕はケイさんの紅白の巫女服をまじまじと見ていた。
金髪に褐色の肌、巫女服……なんとも取り合わせの悪い組み合わせだった。
「それじゃあ……ケイさんも……」
「うん。まぁ、そのやそ……なんとかがどんなもんなのか知りたいしね」
「で、でも……それは危険なんじゃ……」
「え? そりゃあまぁそうかもだけど……かといって黒須君だけに任せるのもねぇ」
そういった後で、ケイさんはチラリと背後の琥珀を見る。
先程から、僕とケイさんの背後を少し離れて無言で付いてくる琥珀……その表情は相変わらずニコニコとしている。
「アタシがいたほうが、アイツが本性出してくれそうだしね」
「そんな挑発するような真似……大丈夫なんですか?」
僕がそう言うと、ケイさんはふと胸元から何かを取り出してきた。
見ると、それは御札のような……というか、御札そのものであった。
「これ。黒須君に託すわ。アタシに何かあったら、これ使って」
「え……使って、って……僕こんな御札なんて……」
「まぁ、その時になったら適当になんとかするからさー。ね?」
相変わらず緩い感じだが……本当に大丈夫なんだろうか。
結局そうこうしている間にも、白神神社にたどり着いてしまった。
昨日はそうではなかったのに、どうにも落ち着かない……ケイさんもどことなくソワソワしている感じだった。
「さて……では、はじめましょうか」
琥珀は石造りの腰掛けに座ると、即座に八十神語りを開始しようとした。
「……へぇ。アタシ、参加していいの?」
ケイさんがそう聞くと、琥珀はニコニコしたままでケイさんに顔を向ける。
その笑顔はどこか恐ろしくてケイさんも少しビクッとした。
「ええ。問題ありません。後悔するのは……アナタですから」
「は? 何言ってるわけ?」
「まぁ、いいじゃないですか。それより始めましょう。ワラガミ様の話を」




