鳥居の先
「え……な、なにこれ……」
思わず僕はそう呟いてしまった。
目の前にあるのは……神社だ。
焼け跡ではない。そこにあったのは、立派な鳥居に拝殿……
まぎれもなく神社がそこにあったのだ。
「……どういうこと?」
怪訝そうな顔でケイさんがそう訊ねてくる。僕も意味がわからなかった。
「わ、わからないです……で、でも、僕の記憶ではここは旧白神神社で……」
……旧白神神社? これが?
今僕がいる境内も綺麗に掃除されている……どう見たって、誰かがいる神社だ。
旧ってことは昔ってことで……誰かがいるはずもない。
「……あ、あれ……じゃ、じゃあ……ここが白神神社で……」
「おい」
僕がそう言うと、ケイさんが僕の肩を強く叩いた。朦朧としていた意識が戻ってくる。
「しっかりしてよ。ここは、旧白神神社なんでしょ? せんせーはそう言ってたよ?」
「え……で、でも……そ、そのはずなんですけど――」
「あら? どうかしましたか?」
と、そこへ声が聞こえてきた。
境内に突如として顕れたのは……またしても巫女服姿の女性だった。
見た目は……僕やケイさんよりも年上そうに見える。それこそ、30半ばくらいなのだが……すごく綺麗な人だった。
腰までかかる黒い髪……なぜだかわからないが、僕はその人を見ていると、なぜか懐かしい気分になってきた。
「……アンタ、何?」
しかし、ケイさんはぶっきら棒にそう訊ねる。その顔は酷く機嫌悪そうだった。
「フフッ。私、ですか? 私はこの神社の巫女ですよ? お二人はお参りにきたのですか? 嬉しいです。きっと、白神様もお喜びになりますよ」
白神様……確かに、その巫女服姿の人はそう言った。
やはり……ここが白神神社なのだろうか?
「……あいにくだけど、アタシが訊いてんのはそういうことじゃない。アンタがどういう存在か訊いてんだけど」
ケイさんがそう言っても、巫女服の女性はニコニコしている。そして、しばらくすると、ポンと手を叩いた。
「ああ! 私の名前ですか。私は……黒田……黒田真白と言います」




