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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第五神
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思い出せない存在

「あれは……憑かれてるっぽいね」


 琥珀が去った後で、石段を登りながら、ケイさんは僕にそう言ってきた。


「……憑かれている?」


 聞き慣れない言葉を聴いて、僕はケイさんに尋ね返す。


「うん。例えばさ、神様が憑依するとか……聞いたことない?」


「え……あー……つまり、琥珀には神様が取り憑いているってこと?」


 僕がそう言うと、ケイさんは大きくため息をつく。


「……だったら、良かったんだけどねー」


 意味深な感じでそう言うケイさん。僕はもちろんその先を尋ねる。


「ど……どういうことですか?」


「……神様ってのはさ、よく人に取り憑くもんなんだよね。私もそういうのは聞いたことあるし。別にそれは問題ないんだ。問題なのは……神様じゃないモノに取り憑かれた時なんだよね」


 忌々しげにそういうケイさん。神様じゃないもの……なんとなく僕は嫌な気分になった。


「……神様じゃない……それって、琥珀に取り憑いているのは……」


「ああ。あれは神様じゃないね。神様になれなかった存在……ううん。もっと質の悪いモノだよ」


 神様の成り損ない……つまり、先ほど琥珀の口から白神と名乗ったあの存在……それが神様になれなかった存在ということなのだろうか。


「それは……どういう存在なんですか?」


「うーん……今はちょっとわかんないなぁ。そもそも、アイツが何をしようとしているのとか……ただ、気になるのは……アンタの知り合いが進んでアイツに身体を貸したってことだよね」


 知り合い……つまり、琥珀のことだ。


 確かに白神の言葉を信じるならば、琥珀は進んで白神を自らの身体に取り憑かせたということになる。


 しかし、一体どうして……


 そして、何より僕の頭の中にずっとあるモヤモヤ……それは白神という存在に関してだった。


 僕は……白神という存在を知っている。もちろん、それは琥珀のことではない。琥珀に取り憑いている白神のことだ。


 しかし、それに関することは、まるで鍵をかけられているかのように、うまく思い出せないのである。


 なんとなく会った気がする……その程度にしか考えられないのである。


「……ま。今考えても仕方ないわけだし……さっさと神社の跡とやらを見に行こうよ」


 ケイさんにそう言われて僕はそれに同意する。


 ただ……僕にはもう一つ不安なことがあった。


 石段を一段登る度に感じる不安……それは、間違いなく確実に、大きくなっているのだ。


 それをケイさんに伝えるべきか、もしくはケイさんも既に感じているのか……


 僕はそれを確かめる勇気がないままに、石段を登り続けたのだった。

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