表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第五神
71/200

奇抜な巫女

 それから、僕は十分後には喫茶店テンプルにやってきていた。


 そして、扉を開いて中へ入る。


「はぁ~……ケーキもパフェもないとか~……あり得ないんですけどー」


 店の奥からは聴いたことのない声が聞こえてくる。僕はそのまま声のする方に近づいていく。


「ああ、黒須君」


 と、先に番田さんが僕のことを見つけた。僕は小さく会釈する。


 そして、番田さんの向かいの席には……


「ん~? あ、やっと来たわけ?」


 金色の髪に小麦色の肌……ここらへんでは見たことのない高校の制服を着ている少女がいた。


「ああ、黒須君。とにかく座ってくれ」


 僕は言われるままに番田さんのとなりに腰掛ける。


 目の前に対峙した少女は……いわゆるギャルっぽい少女だった。


 少なくとも白紙町では見たことはない……都会風な感じだ。


「えー……紹介しよう。彼女は――」


「ちーっす。アタシ、ケイね。アンタは?」


 番田さんの紹介の遮って、ギャル風の少女……ケイは僕にそう話しかけてきた。


「え……黒須……賢吾です」


「ふぅーん……まぁ、せんせーから大体話は聞いているからさ。この町、変な儀式があるんだって?」


 目の前に置かれたオレンジジュースを不機嫌そうに口に含みながらケイはそう聞いてくる。


「え……へ、変な儀式というか……」


 僕は助けを求めるように番田さんを見る。


 番田さんは苦笑いしながらケイを見る。


「……その……なんで本名を名乗らないんだ?」


「はぁ? せんせー、わかってないなぁ。名前っての大事なもんなんだよ? ポンポン軽々しく知らない人に教えるもんじゃないの。だから、せんせーもこの町ではアタシのこと、ケイって呼んでね」


 そう言って、ケイは今一度オレンジジュースを一気飲みすると、鋭い視線を僕に向けてきた。


「まぁ、アンタには教えてもいいんだけど……アンタにまとわり付いているやつには教えられないのよねぇ」


 そう言われて僕は思わず番田さんを見る。


「あ、あはは……彼女は……巫女なんだ。以前私が調査で世話になった神社で知り合ってね。それ以来こういう件では世話になっているんだ」


 巫女……とてもそのギャルっぽい容姿からは想像できなかった。


 そもそも、琥珀も巫女だが……とても琥珀と同じような生業の存在には見えない。


 でも、僕にまとわり付いているもの……一体彼女には何が見えているのか……


「まぁ、とにかくさぁ、さっさとその原因に会わせてくれない? こんな辛気臭い町あんまり長くいたくないんですけどー」


 不機嫌そうにそういうケイ。原因、と聴いて、真っ先に脳裏には琥珀のことが思い起こされる。


 ただ……琥珀にはどうすれば会えるのだろう? 僕は彼女の住んでいる場所を知らない? というか……いつも彼女はどこへ帰っているんだ? いつも僕のことを迎えにくるけれど……一体どこからやってきているのだろう。


「ふむ……そうだな。黒須君。とりあえず、この……ケイ君と一緒に北側地域に行ってみるのはどうかね?」


「え……北側、ですか?」


 僕が嫌そうな顔をすると同時に、ケイがニヤリと微笑む。


「いいね、どうも気になってたんだ。その話。案内してよ」


「よし。ではさっそく――」


「ああ、せんせーはダメ」


「……は?」


 番田さんと僕は思わず顔を見合わせる。それを見て、ケイは悪戯っぽく微笑んだ。


「私とこの……黒須君? 二人で行くから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ