変化する周囲
僕は……非常に気まずい気分だった。
なぜ……こんな状況になっているのか。
いや……というか、一体何が目的なのか……既に朝から何度となく自身で問いかけて北問が、未だに頭の中でぐるぐるしている。
僕は恐る恐る背後を振り返ってみた。
「ん? どうしました? 賢吾」
背後には……少し離れて、琥珀が付いてきている。
何事もなかったかのように……さも、それが当然であるかのごとく。
しかし、僕にとっては違和感しかなかった。
「……えっと、琥珀。一応聞くけど……いつもこうやって僕と一緒に学校に?」
聞いているこっちとしてもなんだか変だと思ったが、それでも聞かずにはいられなかった。
すると、琥珀はキョトンとした顔で僕のことを見る。そして、フッと小さく笑った。
「うふふ……賢吾。アナタは当たり前のことを聞くのが好きなのですね」
「……当たり前ってことは、やっぱり、そうなんだ」
僕がそう言うと、満足そうに琥珀は頷いた。
「ええ。そうです。ずっと前から……私とアナタはこうして登校してきました。そして、同じクラスなのですから、そのまま教室に入りますね」
「……え? 同じクラス?」
またしても新たな情報が飛び込んできた。同じクラス……いやいや。僕のクラスには琥珀みたいな女の子はいなかったはずである。
しかし、琥珀は僕が不思議そうな顔をするのをわかっていたようで、目を細めてそのまま不敵な笑みを浮かべて歩き出す。
「行ってみればわかります。さぁ」
そういって、僕の先を行く琥珀。僕は仕方なくその後を付いて行く。
程なくして学校につく……しかし、学校に着いて見ても異変は続いていた。
「白神さん! おはようございます!」
こうやって、琥珀に挨拶する生徒が後を絶たないのである。
それこそ学校のヒロインのような人気……琥珀もその挨拶に笑顔で返す。
でも……何かが違う。僕が探していたはずの……会いたい人はこんな学園の人気者なんかじゃなかったはずだ……
「……随分、人気者なんだね」
思わず僕がそう言うと、当然だと言わんばかり顔で僕を見る。
そんな琥珀は、ついに僕の教室までやってきた。琥珀は戸惑うことなくそのまま教室に入る。
そして、琥珀はそのまま僕の隣の席に座る。
……いやいや。違う。そこは琥珀の席ではなかったはず……その記憶だけは僕の中に確かに存在していた。
しかし、周りの反応は違っていた。まるでそれが当然のように、席に座った琥珀の周りに、クラスメイトが集まってくる。
「……一体何がどうなってるんだ……?」
僕が意味もなく呟くと、琥珀はそれを聞いていたようで、ニヤリと微笑んだ。




