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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第四神
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早朝の訪問者

 そして、次の日。


 無論、僕はあまり眠ることができなかった。


 おかしくなってしまった記憶、そして、明らかな異常……


 自分の頭がどうにかなってしまったのか……そう考えると、背筋に冷たいものが走るのである。


 一体どうしてこんなことになっているのか……とても、僕一人では理解できない状態だった。


「……はぁ」


「あら、賢吾。どうしたの?」


 既に父さんは会社に行った後だったらしい。リビングでは母さんが僕に対しての朝食の準備をしていた。


「……いや、ちょっと眠れなくて」


「あら。そうなの? 何か悩み事? もしかして……琥珀ちゃんのことかしら?」


 嬉しそうにそういう母さん……確かにその通りなので、否定することもできない。


「……まぁ、そんなところかなぁ」


「うふふ。いいわねぇ、若いって。でも、ダメよ。悩んでばかりじゃ。きっと琥珀ちゃんだって、賢吾と同じことで悩んでいるかもしれないわ」


 同じこと……いやいや。問題の原因があの琥珀にあるのだ。


 そもそも、琥珀の正体だって未だに正確に理解できていない……一体彼女の目的はなんなのか……


 僕はけだるい気持ちのままに母さんが運んできてくれたコーヒーに口を付ける。


「というか、賢吾。そろそろ時間じゃないかしら」


「……時間? 学校に行く時間ってこと?」


 僕はそう言われて時計を見る。


 学校までは十分程度……まだ家を出るには早い時間である。


「あはは……母さん。まだ早いよ。それにコーヒーだってまだ飲んでいる最中だし……」


「あら? でも、そろそろ――」


 母さんがそう言った矢先だった。


 玄関からピンポーンというチャイムの音が聞こえてきた。


「ほら。やっぱり。もう来ちゃったじゃない」


 母さんが呆れ顔でそう言う。僕はなにがなんだかわからないままに、玄関へと向かう母さんの後ろ姿を見ている。


「ごめんなさいね……今すぐ支度させるから」


「いえ。お母様。お気になさらず」


 ……ん? 今の声……どこかで聞いたことのある声だ。


 というか……昨日聞いたばかりの声……同時に、僕に恐怖を思い出させる声だった。


「ほら! 賢吾。琥珀ちゃん、もう来ちゃったわよ」


 琥珀……僕はすぐにはその言葉の意味が理解できなかった。


 しかし、暫く経ってから、それが信じられず、慌てて玄関へと向かった。


「あら。おはようございます。賢吾」


 僕は唖然としてしまった。


 そこに立っていたのは……ウチの学校の女子の制服姿の、白神琥珀だったのである。

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