表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第四神
58/200

忘れられた約束

石段を降り切ると、琥珀は立ち止まった。


 僕も同じように立ち止まる。


「それでは、ここでお別れですね」


 名残惜しそうな表情で、琥珀は僕にそう言う。


「う、うん……じゃあ、また、次の八十神語りの時に……」


「うふふ……何を言っているのですか? また、明日学校で会えるじゃないですか」


 笑いながらそういう琥珀……学校?


 いや、確かに、僕は目の前にいる女の子と似た女の子と同じ学校に通っていた。


 でも、それは琥珀ではない……違和感が僕の心のなかで大きく膨れ上がる。


「どうしたんですか? 私と明日、学校で会いたくない、ってことですか?」


 琥珀の表情が固まる……僕は何も言えずただ小さく首を横に振った。


「あ……そういうわけじゃ……ただ……僕は……」


「……大丈夫ですよ。わかっています。賢吾は今、戸惑っているんですよね?」


「え?」


 僕の返事を聞いているのかいないのか、琥珀はうっとりとした顔で話を続ける。


「いいんですよ。ゆっくり受け入れてくれればいいんです。私は待っています。いつまでも……たとえ、アナタに約束を反故にされても」


 その時の琥珀の表情は、ゾッとするほど冷たいものだった。


 約束……そうだ。僕は大事な約束を破ってしまった……でも、何の約束だ? いや、わかって入る。目の前の琥珀に関係している約束……


「琥珀……僕は……」


「もう帰って下さい。明日、会いましょう」


 琥珀がそう言うと、一陣の風が吹いた。思わず僕は目をつぶってしまう。


 次に目を開けた時には……既に琥珀の姿は僕の前にはなかったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ