いつの間にか
その後、僕は家に帰ることにした。
番田さんから聞いた話……問題だったのは、黒田さんのお爺さんの話だ。
最初から……分かっていた。黒田さんのお爺さんは、分かっていた……
つまり、最初から、白神さんに僕が出逢えば、紅沢神社に救援を求めること、そして、黒田さんと僕が出会うこと。
そして、黒田さんが……僕と仲良くなることも、全部折込済みだったってことか?
「……そんな、馬鹿な」
そもそも、一体なんでそんなことをする? 黒田さんはお爺さんにとって、大事な孫娘じゃないないのか?
お爺さんはカガミ様の時に言っていた……孫娘までも、失うわけにはいかない、と。
「……まで、も?」
よく考えてみたら、あのセリフ、可笑しい。
「までも」……それじゃあ、お爺さん誰かを失ったってことか?
いや……ちょっと待て。いつも黒田さんの家に行っていて、不思議に思っていたこと……僕が持っていて、黒田さんが持っていないもの……
「……両親。黒田さんのお父さんとお母さんだ」
いないのだ。黒田さん自身もその話をしていない。
そうなると、お爺さんのあの発言は、黒田さんのお父さんとお母さんに関係があることなのだろうか。
なぜ、黒田さんにはお父さんとお母さんがいないのか……
そして、お爺さんは本当に、黒田さんが行方不明になってしまうことまで、織り込み済みだったのだろうか。
だったら、番田さんの言うとおり、なぜ、邪魔をしようとしたのか。黒田さんがこうなることを阻止しようとしていたのか……
「一体、どうすれば……」
ふと、夕暮れの陽光を浴びながら、顔を上げてみる。
恐ろしいことに、いつのまにか僕の足は、白神神社にやってきてしまっていたのだった。




