行方しれずの彼女
それからの十日間は……虚無的だった。
何事も無く、平穏な日々が続く。
無論、僕の頭には……黒田さんのことが気にかかっていた。
あれから毎日、紅沢神社には通っている。無論、黒田さんは未だに戻ってきている気配はない。
学校にも来ていない……完全に行方不明者扱いだった。
ただ、不思議なことに、学校では黒田さんがいなくなったことを際立って問題にするということはなかった。
もちろん、生徒が1人いなくなったということに関しての噂はあったが……
黒田さん自身がそう言っていたように、まるで最初から黒田さんがいなかったかのように、誰も大して気にしていないようだった。
……いや、確かに黒田さんは存在した。僕だけはそれを自信を持って言うことが出来る。
そう思って、僕は何度も校舎裏の小さな祠にやってくる。
黒田さんはあの日、僕におにぎりを持ってきてくれた……全部おにぎりだったけど……美味しかった。
心を込めて作ってくれているという思いが……おにぎりを通して感じることができた。
だが……そんな黒田さんはいなくなってしまった。僕だけを残して。
「……黒田さん」
僕はどうすればいいのか……
わからないままに、昼休みが終わるチャイムと共に、僕は教室へ戻る。
そして、放課後、結局何事もなく、僕は家に帰ることにした。
「おい、学校の前に不審者がいるらしいぜ?」
ふと、廊下を歩く同級生の言葉が聞こえてくる……不審者? 一体なんだろうか。
「なんでも格好は黒いスーツで……なんというか……怪しいヤツらしいぜ」
それを聞いて、ふと、僕は嫌な予感がした。そのまま廊下を走って学校の前へと走りだす。
「はぁ……や、やっぱり……」
「おお、黒須君」
案の定、その特徴を聞いて予想した通りに、学校の前に立っていたのは、黒いスーツの怪しげな探求者、番田宗次郎だった。




