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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第三神
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消失

 それから、僕は全速力で紅沢神社に戻った。


 神社の境内に戻っても、特に変わったことはない……ただ、なんとなく嫌な感じがした。


 なんというか……不可思議な出来事……それが間違いなく起こっているような感じだったのだ。


「黒田さん!」


 僕は境内内の黒田さんの家に遠慮無く押し入る……お爺さんの制止はなかった。


 それどころか、人の気配がない……黒田さんはどうしたのだろうか。


「黒田さん!」


 もう一度、僕は黒田さんの名前を呼ぶ。


 その間に、八十神語りの歌の一節を思い出す。


 『よんがみきたりて かみかくさん』……これは、どういう意味なのか。


 いや、そんなのは簡単だ。かみ、かくさん……


「神……隠さん……」


 神隠し……それを意味する可能性は充分にある。


 だが、僕は一縷の望みにかけていた。


 それを意味しない可能性を。


 少し戸惑ったが……僕は既に黒田さんの部屋の前に来ていた。


 家にいるはずのお爺さんの姿が見えないのは気になったが……それでも黒田さんの様子を……いや、黒田さんが部屋の中にいるかどうかを確認したかった。


「……黒田さん!」


 僕は思い切って、黒田さんの部屋のドアを開けた。


 その部屋の中には……


「……いない」


 誰もいなかった。


 部屋の中には……夢で見た通りの光景が広がっていた。


 黒田さんのぬいぐるみがあちこちに散乱し、その手足や胴体が千切れている……


 そして……


「……俺の名前」


 ぬいぐるみの額には、俺の名前が書かれた紙が張ってある。


 しかし、黒田さんの姿はなかった。


 瞬時に理解した。


 黒田琥珀は、隠されてしまったのだ、と。


 そして、その通りに、黒田さんは、その日から、行方不明になってしまったのだった。

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