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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第三神
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炎の過去

「ここが……旧白神神社、ですか」


 思わず周りを見ながら、僕は思わず呟いてしまった。


 黒く、仄かに焦げ臭い、黒い瓦礫の山……それは、紛れも無くこの場で火災が起きたことの証明だった。


「ああ。随分と火災があってから随分と時間が経過したようだ。立ち入り禁止も解除されているようだな……というか、そもそも、もはやこの場所は忘れられていると言ったほうがよいのか」


 番田さんはそう言いながら、神社の境内を見回している。僕はふと、神社に鳥居がないことに今更ながらに気づいた。


 確か、鳥居だけは、今の白神神社にそのまま移された……黒田さんからその話は聞いていた。


「でも……これだけ黒焦げだと、何も残っていないんじゃないですか?」


 僕がそう言うと、番田さんは小さく頷く。


「……そうだな。ところで……火災の原因を、君は知っているのか?」


「え? 原因、ですか? ちょっとわからないですけど……」


 僕がそう言うと、番田さんは少し間をおいてから、話を続ける。


「……放火だ。自然発生した火災ではない」


「え? 放火……」


「ああ。10年ほど前、二人の男女の焼死体がこの神社の焼け跡から発見された……現場の状況から見ても、警察は放火と判定した……それが旧白神神社火災の真相だ」


「……その、放火した男女っていうのは、誰なんですか?」


「さぁ……残念ながら、損傷が激しく遺体の身元はわからなかったそうだ。ただ、その放火事件が原因で白神神社はこの旧地域から南側に移転することになった……今まで旧地域で忘れられていた白神神社が、だ」


「え……つまり、それは……」


「ああ。まるで白神神社がそうさせたかのように放火は起きた……そして、さらに興味深いのは……火の出火元は拝殿だったそうだ」


 拝殿……その言葉を聴いて、僕はハコガミ様の話を思い出す。


 それじゃあ、つまり、その十年前から、既に白神神社は……いや、その事件にも、白神さんが関わっているってことなのか?


「拝殿の焼け跡はこちらだ。付いてきてくれ」


 番田さんが歩き出した。僕は先程よりも大きな不安を感じながら、その後を付いていたのだった。

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