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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第三神
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意味

 白神さんは、話が終わった後も、嬉しそうに僕のことを見ていた。


 今の話の意味……それは僕にだって分かる。


「……準備って、こういう……」


 僕は思わずそう呟いてしまった。白神さんは笑っている。


「フフッ……さて、どうだろうか。君は私が今、君とあの巫女の状況を説明するためにハコガミ様の話をしたと思っているだろうが……正確にはそうではない」


「え……それって……」


 白神さんはそう言うと、僕に背を向け、どこを見るでもない、どこか遠くを見るような目をする。


「八十神語りは、その全ての話に意味がある。一つで八つ、八つで一つ……それが八十神語りなんだ」


「ど……どういうことですか。意味が……」


 僕がそう言うと前に、白神さんは振り返った。そして、目を細めて僕のことを見る。


「君は、知らない。八十神語りのことも、あの巫女のことも。そして、何もすることはできない。なぜなら、それは君が生まれるずっと前から決まっていたことで、これから先もそうだからだ」


「な……何を言っているんですか!? 意味がわかりません!」


 僕は半狂乱になって叫んでしまった。しかし、白神さんは動じること無く僕のことを見ている。


「わからなくて結構だ。理解されなくてもいい。もうここで、この姿で君と出会うこともないから」


「……へ? な、何を言って……」


「あの巫女がいるからね。彼女は良い器だ。きっと、八十神語りを最後までやり遂げてくれるだろう」


 器……それは、黒田さんのことか。


 というか、一体どういうことなんだ。ここでこの姿で会うことはない、って……


 僕はなんとなく理解できない嫌な予感を感じていた。


「……もう、いいです。僕は……黒田さんの所にいきます」


「ああ。それがいい。行って、知るといい。これから何が起こるのかを」


 馬鹿にしたような調子で、白神さんはそう言う。これ以上、この人に付き合っている必要はない。


 僕は無言で立ち上がり、そのまま白神さんの横を通って、石段を降りようとした。


「また会おう。愚かな供物よ」


 そう聞こえて、僕は思わず振り返った。しかし、既に境内には白神さんの姿はなく、一陣の不快に生暖かい風だけが僕の頬を撫でた。

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