白紙町と白神神社
「……ふぅ」
僕の名前は黒須賢吾という。
住んでいる町は白紙町……「はくし」という、なんだか妙な名前の町である。
特に何もない片田舎の小さな町で、基本的に僕も退屈している。
駅前の小さな本屋、申し訳程度にデパートの中に入っているゲームセンター……若者の娯楽といえば、この程度だ。
だが、最近僕は、幸運にも新しい娯楽を発見することができた。
僕は、その娯楽に「出会う」ために、今、白紙町の端にある白神神社に向かっていた。
白神神社は、小さな神社だった。それこそ、参拝客もいなければ、神主さんがいるところも見たこと無い。
かといって打ち捨てられているわけではない。
いつも境内は綺麗で、誰かが掃除しているようだった。
「……はぁ。そろそろ、か」
僕はここ最近、学校が終わると毎日、白神神社に向かっていた。
白神神社には、僕が目的にしている人がいることがわかっているからである。
僕は急ぎ足で、そのまま境内へと続く階段を駆け上がっていく。
赤く、年季を感じさせる鳥居をくぐった後で、僕は辿り着いた境内を見回す。
「あ」
と、僕は境内の端……小さな休憩用の椅子が設置してある場所に「その人」を見つけた。
その人こそ、僕が目的にしている人だった。
「白神さん!」
僕が声をかけると、椅子に座っていた人はゆっくりと僕の方に顔を向け、優しく笑みを浮かべる。
「やぁ。来たのか」
「はい! 学校終わって、すぐ来ました」
思わず僕は大きな声でそう言ってしまう。
赤と白の巫女服姿に、長く、白い髪……とても普通の人には見えないその姿は、どこか神秘的にさえ見るくらいに、美しかった。
「そうか。ありがとう」
「えへへ……で、今日は何の話、しましょうか?」