『八十神語りの実際とその影響に関して』
1、八十神語りについて
筆者は、八十神語りに関して実際にその手順通りに、再現を行った。
これは筆者自身の経験ではないが、筆者の知人による経験であるので、その分析と成果には、学術的価値に問題はないかと思われる。
八十神語りには8つの手順が必要であり、それぞれの神の話が八十神語りの実行者に「神を憑かせる」という目的で行われている。
そして、八十神語りを行う側の人間は八十神語りが進行することで、徐々に人間という存在ではなく、どちらかというと神としての存在に近くなっていく。
実際、筆者が間近で見た八十神語りも、実行した側は徐々に人間らしい感情や反応をなくしていき、神としての存在に近づいていった。
そして、興味深いことに、実行者は八十神語りが進みにつれて、八十神語り聞く受手側に対して強く好意を抱くようになっていった。
最終的には、八十神語りは実行者が受手側との心中を望むようになる。
筆者が考えるに、八十神語りとは長い年数においてその形式が変化はしてきたが、古来より、神に生贄を捧げる際に、生贄を神格させるための儀式ではなかったのかと考える。
八十神語りを終えた際には、関わった物は進んで神に対する死を選ぶようになる……それが八十神語りの本質ではなかったのかと筆者は推測している。
(以上、番田宗次郎教授の論文の一部分より抜粋)