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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
偽神 灰村さん家の八十神語り
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神様のいる町

 私は一度、ホテルに戻った。


 ホテルに戻って「仕事道具」をとってくる必要があったのである。


 もちろん、仕事道具が入っているバッグは、見た目はただのスーツケースだ。


 中には瓶に詰めた白いペンキ……そして、今までのコレクションが入っている。


 コレクションといっても、殺した女達の髪を白いペンキで塗ったもの……しかし、あの女を殺せば、そんなまがい物はもう必要ない。


 アイツの白い髪こそ、私が探し求めていた物……私はポケットに隠したナイフを思わず触ってしまう。


 問題はタイミングだ……抵抗されるのは私の趣味ではない。


 一瞬で終わらせる、それが私のモットーだからだ。


 既に夜になってしまっていたが、私は先程と同じ道を行って、町の北側の入り口にやってくる。


 そこには……


「お待ちしておりました」


 白髪の女が立っていた。私は高ぶる気持ちを抑えて女を見る。


「いえいえ。わざわざアナタのような美人に迎えに来てもらうとは……光栄です」


「フフッ。お上手ですね。では、私の家にご案内致します」


 そう言って女は歩き出した。私もその後に続く。


 相変わらずの雰囲気……やはり、ここは異常だ。


 そして、私の前を歩く黒い服の女も。


「アナタ……知っていますか?」


「え? 何をです?」


 女は振り返らずに、いきなり私に話しかけてきた。


「この町には、神様がいるんですよ」


「神……ああ、神社のことですか」


 私がそう言うと女は立ち止まる。そして、笑顔でこちらに振り返った。


 その笑顔は……とても邪悪だった。


 目を細めて、まるで私のことを舐め回すように見つめている。


「違います。本当の神様です」


「本当の……神?」


「はい。この町には今も神様がいるんです。だから……定期的に、生贄が必要なんですよ」


「生贄……ハハッ。そんなオカルトな……」


 私はそう言ってみたが……女は至極真面目な様子だった。


 おかしな女とは思っていたが……やはり、おかしいようである。


 暫くの間、私と女は向かい合ったままだったが……女は歩き出した。


「家までもうすぐです。行きましょう」


 女は歩き出した。私もそれに続く。


 ……神様。


 そういえば、祖父や祖母も同じような事を言っていたような気がする。


 この町の神様には、近づくな、と。


 しかし、よく考えれば神様には近づくな、というのもおかしな話だ。


 神は超常的な存在である。ならば、人がそんな存在に近づくことができるものだろうか。


 ということは、この町の神様というのは、そのままの意味ではなくて、もっと、別な……


「どうしましたか?」


 いきなり女が話しかけてきた。私は、我に帰る。


「あ、ああ……すいません。行きましょう」


 ……今更何を考えているのか。


 既に私は七人も人を殺めている。


 例え、これから地獄が待っていようとそれは当然の報いだ。


 そう考えれば怖いものなど何もない。私はそう思い、今一度ポケットの中のナイフに触れたのであった。

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