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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第八神
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神は去りぬ

「……あれ」


 僕はしばらくしてから目を覚ます。


 周りはなんだか薄暗い。確か僕は……


「黒田さんを助けようとして……それで……」


 思い出した。僕は意識を失ったのだ。蛇の身体に締め付けられて……


 ということは、僕は死んでしまったのだろうか。


「死んでないよ。君は」


 声が聞こえる。僕は振り返った。見るとそこにいたのは……


「……白神さん?」


 巫女服に、白い髪……一番最初に会った時と変わらない姿の白神さんがいた。


「やぁ。大丈夫かい?」


「え……えぇ……ここは?」


「白神神社の本殿だ。よく見てみるんだ」


 そう言われて僕は今一度よく周りを見る。確かに、先程までの白神神社の本殿だった。


「え……でも、たしか僕は……」


「ああ。黒田琥珀に絞め殺されそうになっていた……そのとおりだ」


 そう言うと白神さんは大きくため息をつく。


「まったく……君には心底失望させられたよ。我が一族と違って、アダムの一族はアダムの性格までは受け継がなかったようだな」


「え……ど、どういうことですか?」


 すると、白神さんはフッと自嘲気味に微笑む。


「……最初は、100%恨みだった。私を捨てたアダムの子孫……そして、黒田の一族の末裔……その二人が八十神語りの末に死んでしまえばいい……そう思っていた」


 そう言ってから、白神さんは苦笑いする。


「私もどうしようもない存在だが……我が一族の末裔も私によく似ている。だが、君は違った。君は……アダムとは少し違うようだ」


「え……そうなんですか?」


「ああ。アダムならば……そもそも、この神社には来なかっただろうから」


 そういって、白神さんは僕の方に近づいてくる。


「……私の負けだ。八十神語りは失敗した。君と我が一族の末裔は死ななかった……やれやれ。これで私もようやく未練が無くなったよ」


 そういって白神さんは僕に笑ってみせた。


「君との八十神語り……とても楽しかった。満足したよ。もちろん、私のしたことは最低だ……だが、わかるだろう? 誰だってそういうことをする可能性があるんだ。それを覚えていてくれ」


 そう言うと白神さんは僕に背を向ける。


「そろそろ行くよ。私はもう二度と君達の前に現れない……君がしなければいけないのは……くれぐれも、我が一族の末裔を……大切に扱ってくれ」


「え……ちょ、ちょっと! 白神さん!」


 僕がそういう間もなく、白神さんは薄暗い闇の中に消えていった。


「あ……行っちゃった……」


「……はい。これで……あの人はもう、満足したみたいです」


 と、またしても思いもよらぬ方向から声が聞こえてきて僕は驚く。


「え……あ!」


 声のする方向を見ると、そこには……


「……黒田さん」


 部屋の隅っこで体育座りをして小さくなっている、巫女服姿の黒田さんがいたのだった。

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