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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第八神
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シラカミ様の話

 昔、シラカミ村という小さな村がありました。


 その村の近くには、大きくて白い蛇が住んでいて、大暴れして村に迷惑をかけたり、村の女性を生贄として要求したりしました。


 シラカミ村の村長は、白い蛇が恐ろしく、蛇を退治するどころか、蛇の手下になって、積極的に村人に、蛇に捧げる生贄を出させるように命令したそうです。


 村人達は唯一頼れる存在として村の神社を管理する神主の一族に、蛇を退治することをお願いしました。


 神社を管理する一族は、蛇は乱暴でわがままはあるが、神様であり、それを退治することは、神様を退治すること、村に災いをもたらすと反対しました。


 それに、神様を倒すことができるのは神様しかいないので、自分たちには無理だと言ったそうです。


 しかし、村人は神主の一族にそう言われても理解してくれませんでした。それならば、神様を作ってくれ、と無理難題を言ったそうです。


 大勢の村人……しかも、村のほぼ全員に頼まれてしまった以上、神主の一族も断るわけにはいきませんでした。


 結局、神主の一族は、禁術を使って、一族の女の子の一人に神様の力を宿しました。


 こうして、白蛇を退治することが可能となったわけです。


 女の子は白蛇の生贄になるフリをして、白蛇退治を決行しました。


 激しい戦いは三日間続き、村人たちが四日目の早朝、村のはずれで女の子と白蛇を見つけました。


 白蛇は、頭がなくなっていました。しかし、頭から下は未だにのたうち回っていました。


 一方で女の子は下半身がなくなっていました。一応なんとかまだ生きていましたが、命は残りわずかでした。


 村人たちはその時になって不安になりました。白蛇は倒したが、神主の一族が言っていたように、これは神様を殺してしまったことになるのではないか、と。


 その時、誰からともなくこんなことを言う人がいました。


「だったら、この機会に神様を作ればいい、と」


 その言葉に村人たちは賛同しました。


 そして、あろうことか、村人たちは、残った蛇の下半身と、女の子の上半身を無理矢理縫い合わせたそうです。


 女の子は縫い合わされる時の痛みで絶叫し、怨嗟の言葉を吐きながら死んでいきました。


 しかし、女の子の上半身と縫い合わされた途端に、蛇の身体はのたうつのをやめました。


 そして、村人たちはこの異形の遺体を「シラカミ様」と名付け、神社に奉ったそうです。


 以来、村では、かつて神主の一族が行った禁術……「八十神語り」が、シラカミ様の話をするために用いられるようになりました。


 それを行うのは、もちろん神主の一族の関係者です。


 いつまでも、村人たちの非道な行いを……シラカミ様という神様の存在を、忘れないために……

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