表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第八神
178/200

根源の中へと

「……え、えっと……蛍さん。僕、まだ理解できてないんだけど……白神さんは一体何をしようとしたの?」


 本殿に近づいていく最中、僕は蛍さんに訊ねる。蛍さんも少し難しい顔をして僕を見る。


「うーん……簡単に言えば、白神と、黒田琥珀が求めているものが、厳密には違う、ってことかな」


「え……違う?」


「うん。白神はその……賢吾君のご先祖様を求めている。そして、黒田琥珀は、賢吾君そのものを求めている……それで、微妙にズレが生じているわけ」


「あ、ああ……でも、なんで白神さんは黒田さんを裏切るような真似を……」


「……もしかすると、今まで勘違いしていたのかも」


 と、蛍さんは少し考え込むように、腕を組む。


「え……何がです?」


「今ままで、白神が全ての主導権を握っていると思っていた……でも、実際には、白神が力を貸しているだけで……全ては黒田琥珀が……」


 そう言うと、蛍さんは鋭い瞳で僕を見る。


「……こりゃあ、ナメてかかると痛い目見るかな」


 そう言うと蛍さんはパンパンと自分の頬を叩く。


「よし! ……準備、いい?」


「え、ええ……えっと……僕はこのまま行って大丈夫なんですか?」


 さすがに不安だった。お守りも十字架も無くなってしまって……僕を守るものは今、何もないのである。


 蛍さんは少し悩んでいたが……小さく頷く。


「まぁ……外から私が、簡単に賢吾君には手出しできないようにするから……ただ、一つ、忠告ね」


「え……なんですか?」


「一度本殿に入ったら……全てが終わるまで途中で出てこないこと」


 真剣な表情で蛍さんはそう言った。


「全てが……終わるまで」


「そう。後……私は絶対、外から賢吾君に呼びかけないから」


「え……じゃあ、いつ全部終わったって分かるんですか?」


「それは、わかる。これ」


 そう言って、蛍さんは小さなお皿を取り出した。


 そこに、懐から取り出した粉状のものを盛った。


「……この塩が真っ白になったら、全部終わったってことだから」


「え……塩が真っ白って……そんなの当たり前――」


「これから、真っ黒になるよ」


 抑揚のない調子で蛍さんはそう言った。それは、紛れもなく怖い言葉だった。


「……じゃあ、行ってきて。そのお皿を持って」


 僕は小さく頷いた。行かなければいけないのなら……飛び込むしか無い。


 僕は本殿の扉の前まで行く。そして、一度だけ、振り返った。


 蛍さんは僕を見ていた。そして、優しい笑顔で僕を見る。


「待っているから」


 その言葉を聞いて、僕も笑顔で返した。そして、そのまま本殿の中に入っていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ