表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第八神
171/200

優しさと招き

 それからの日々……八十神語りが行われる日までは、驚く程に何もなかった。


 というよりも、おそらく、琥珀……白神さんが意図的に仕掛けてこなかったのだろう。


 常に誰かに見られているという感覚はあったし、いつも十字架のお守りと……蛍さんから新しく渡されたお守りを持ち歩いていた。


 無論、覚悟は決めている。僕はもう……死ぬつもりはない。


 そして、黒田真白が言っていた言葉……琥珀と白神さんが怒っているということ……


 ……以前のようにどうすればいいかとか……そういう気持ちがまったくないというわけではない。


 だけど……


「賢吾?」


 と、僕は母さんに話しかけられてふと我に帰った。


「え……あ、ああ……ごめん」


 夕食中も、僕は完全に上の空だった。母さんは心配そうな顔で僕のことを見る。


「……大丈夫?」


「あ……うん」


 母さんは心配そうな顔のままだった。父さんは……まだ入院中だ。母さんが心配そうな顔をするのも……そのせいでもあるのだろう。


「……賢吾。その……もう、大丈夫なのよね?」


 母さんは不安そうな顔でそう訊ねる。


 僕は……なんとも言えなかった。


 そして、僕が返事をしないことで、母さんは理解したようだった。


「……賢吾。その……母さんは何も知らないし……わからないわ。でも……アナタに無事でいてほしいって気持ちは……誰よりも強いものだって、自信が持てる」


「え……母さん……」


 いつもほわほわとした母さんが強い口調でそう言った。


 僕は思わず驚いてしまった。


「だからね……危なくなったら……思い出して。自分には待っている人がいるんだ、って……ね?」


 母さんはそういって、僕のことをジッと見ていた。


 なんとなくだけど……母さんも薄々事情を理解しているように思えた。


 無論、そんなことはないのだけど……


「……ありがとう。母さん」


 と、その時だった。


 ふいに、家の電話がけたたましく鳴り響く。


 僕は直感的に嫌な予感を感じた。


「あ! 私が出るわ」


 そういって、母さんは電話に出る。


「あら! どうしたの? うん……ああ。わかったわ。賢吾ね」


 母さんは誰かと話している……僕はその場から動けなかった。


 そして、母さんは嬉しそうな顔で僕に電話を持ってきた。


「はい。これ」


「……誰?」


 すると、決まっているではないかと言う顔で母さんは僕を見る。


「琥珀ちゃんよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ