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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第八神
157/200

僕と彼女と

 番田さんは話を終えると、再度、コーヒーを口に含んだ。


 今の話……ホタルビ様の話。


 どう考えても……というよりも、おそらくそういう意図で僕に話したのだろうが……


「……えっと、番田さん。その……」


「誰の話なのかは、明確にするつもりはないよ」


 番田さんはそう言って、フッと小さく微笑む。ここまで話しておいてそれもないだろうと思ったが……僕にはそれ以上突っ込めなかった。


「……そう……ですか」


「ああ。ただ、君に考えてほしかったのは、君がこれからどうしたのか、ということだ」


 番田さんはそう言って、僕を真剣な顔で見る。


 僕は番田さんの意外な表情に少し驚いてしまった。


「え……僕が……どうするか……ですか?」


「ああ。君が怒らせてしまった彼女にも過去があるということだ。そして、彼女がこんなにも君を助けようとしているのは、単純に私に言われたからではない。君のことを親身に思っているからだ。そんな人間に裏切られたとなれば……彼女はどう思う?」


 僕は何も答えられなかった。ただ、自分のしたことが一層情けなく、あり得ないことなのだということを強く意識する。


「でも……番田さん。蛍さ……ケイさんはもうこの町には……」


「いるぞ」


 いきなり番田さんの口から飛び出してきた言葉に僕は驚く。


「え……で、でも、ケイさん、もうこの件から降りるって……」


「ふっ……言っただろう? 彼女は君のことを君が考えている以上に考えているんだ。それにこの町の神様との決着にも納得していないのも本当だ。だからこそ、まだこの町に残っているんだよ」


 そう言うと、番田さんは残っていたコーヒーを一気に口の中に流し込む。


「さて……無論、君が八十神語りの定めた運命の通りに従うのも1つの手だ。君が死ねば、この儀式も途絶える。しかし、こうは考えないか? 自分を守ろうとしてくれた彼女に、申し訳ない、と」


 番田さんはまたしても真剣な表情でそう言う。


 僕がどうなるかは……確かに1つの問題ではある。でも、それは八十神語りの運命によって左右されてしまうようなものだ。


 だけど、僕のことを今まで助けてくれたケイさんに対する僕の態度は……僕自身が決めることなのだ。


「……番田さん。お願いがあります」


 僕がそう言うと、番田さんはニヤリと微笑んだ。


「ふむ……そうだな。私も丁度ケイくんに用事があったからな。一緒に彼女のホテルに向かうとしよう」


 そういって、僕と番田さんは一緒に喫茶店を後にしたのだった。

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