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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第八神
154/200

万策尽きても

「ば……番田さん」


 番田さんだった……随分と久しぶりに会った気がする。


「……なんだ。アナタですか」


 琥珀はつまらなそうにそう言う。番田さんは何も言わずに琥珀を見ている。


 番田さんはちらりと僕の方を見てから、また琥珀の方に視線を移した。


「アナタが連れてきたあの女……今日は一緒じゃないのですか?」


「ん? ああ、ケイくんのことか。そうだな……今は一緒じゃない」


 番田さんのその言葉を訊くと、琥珀は嬉しそうに微笑んだ。


「そうですか……アナタもこれ以上何をしようが無駄ですよ。既に賢吾の運命は八十神語りから逃れられないのです。何をしても無駄です」


 琥珀は嬉しそうにそう宣言する……実際その通りなのだ。僕は既に八十神語りから逃れられないのだ……


「……確かに。そうだな。私には既にできることは何もない」


 と、番田さんはそう言った。それを聞いて僕は確信した。


 ああ……本当に終わりなのだ、と。


 無論、自分が招いた状況だ……今更足掻くのも惨めだが……それにしてもやはり辛いものがあった。


「そうですか。でしたら、さっさと消えて下さい。もうこの町にも用はないでしょう?」


「ああ、だが……そこの黒須君とは話をしておきたい。それなりに長い付き合いだ。話をもせずに別れるのも寂しいからな」


 そういって番田さんは僕のことを見る。僕は何も言わずにただ番田さんのことを見ていた。


「……そうですか。好きにすれば良いのでは」


 そう言うと琥珀は、不満そうな表情を浮かべた後で、僕と番田さんに背中を向けてを歩き出した。


 暫くの間、僕と番田さんは、琥珀の姿が見えなくなるまでその場で動かなかった。


 そして、琥珀の姿が随分と遠くなってからのことだった。


「……やれやれ。油断ならない相手だな」


 番田さんはそういって苦笑いする。


「番田さん……今日は……」


「言ったとおりだ。私には既にできることは何もない」


 番田さんはそうはっきりと言った。僕は何も言えなかった。ただ……悲しげにうつむくことしかできなかった。


「……ただ」


「……ただ?」


 そう言うと番田さんは少し間を置いてから、ニヤリと微笑む。


「……君が怒らせた彼女は……まだ、この町の神様との決着に、納得はしていないようだ」

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