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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第八神
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追い詰められる精神

 学校での授業もいよいよほとんど頭の中に入らなくなってきた。


 考えてみれば……後一週間で、僕は死ぬかもしれないのだ。


 というよりも、ほぼほぼ死ぬ可能性が大なのだ。


 そうなると学校の授業なんて集中できるわけがない。


 それに集中できない理由はそれだけではない。


 視線だ。


 以前よりも増して視線を感じる。


 それが何の視線かは……琥珀のものである。


 どこにいても琥珀の視線を感じるように鳴った。それは、既に家の中にいてもである。


 自分がいよいよ八十神語りから逃れられないということが、僕には強く意識出るようになってきた。


 だから……精神的にも僕は相当参ってきてしまったのである。


「賢吾」


 授業が終わる。琥珀が僕に話しかけてきた。


 僕は何も言わずに立ち上がる。琥珀も少し離れて僕の後を付いてくる。


 どこにいても見張られている……頭がどうにかなってしまいそうだった。


「……いい加減にしてくれ」


 学校を出てからしばらく歩いた場所……人通りの少ない途で、僕は思わずそう言ってしまった。


「はい?」


 しかし、悪びれる様子はなく、琥珀は僕のことを見る。


「……もう……勘弁してくれ……八十神語りから逃げようなんてしないから……僕をずっと見張り続けるのは……やめてくれ……」


 僕は懇願する気持ちでそう言った。


 すると、琥珀はニッコリと微笑んで僕を見る。


「嫌です」


 そして、嬉しそうにそう言った。


 なんとなく予想はしていたが……まぁ、当たり前の返答である。


「……なんで……なんで僕なんだ……」


「あら? 今更何を言っているのです? アナタが私……そして、白神さんから逃れられないのは、アナタだけの問題ではないのです。それは……云うなれば運命なのですから」


「……運命……そんなの……酷すぎる……」


「ふふっ。酷すぎる、ですか。でも、あの泥棒猫だって、賢吾のやったことを受けて、きっとそう想いましたよ?」


 僕がダメージを受けることを承知で、琥珀はそう言った。


 そして、実際僕は何も言い返せなかった。


 もし、今ケイさんの協力が得られるとわかっていたら……僕はまだ精神を安定させることができたかもしれない。


 だけど、今の僕には……


「そう。私しかいないんです。もう私だけしか」


 琥珀が勝ち誇ったようにそう云う。そう僕には、もう誰も――


「残念だが、まだ私がいるんだが」


 と、そこへ聞こえてきた聞き覚えのある声。


「え……あ、アナタは……」


「やぁ、待たせたな。黒須君」


 黒いスーツに、妖しげな雰囲気……そこには、考古学者、番田宗次郎が立っていたのだった。

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