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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第八神
152/200

残された日々

「はぁ……」


 思わずため息が出てしまう。


 その日も僕は……あまり眠ることができなかった。


 未だに脳裏に浮かんでくるのは……ケイさんのあの表情だった。


 ケイさんは……泣いていたのだ。


 今回は確実に僕のせいでケイさんは危険な目にあった。


 そして、僕はそれをわかっていて……ケイさんの手を振り払ったのだ。


 ケイさんが怒るのも当たり前である。


 僕は今までケイさんに手を差し伸べられてきた。助けられてきたのだ。


 それなのに僕はこの期に及んで……その手を振り払った。


 自分でも嫌になるほどにそれが最低の行為だということは……心底理解することができた。


 そして、その日も僕は学校に行く。無論、意思とは関係なしに、行かざるを得ないのだ。


 それが日課であるし、何よりそれは義務だから。


 ただ学校に行くと必ず会わなければいけない存在。それが――


「おはようございます。賢吾」


 今日も……琥珀は家の前で待っていた。貼り付けたような笑顔で嬉しそうにしている。


「……ああ、おはよう」


「どうしたのですか? なんだか、元気がないようですが」


 ……琥珀はわかりきっていることだろうに、僕にそう訊ねてくる。


 僕は何も言わない。僕に無視されても琥珀は僕がそうすることを理解しているようで、特にどうこうするというわけではなかった。


「それにしても、早いものですね」


 ただ、その日は琥珀は不意にそんなことを言ってきた。僕は思わず琥珀の方を見る。


「……何が?」


「何って……八十神語りですよ。最後の八十神語りまで、後一週間ですから」


 嬉しそうにそういう琥珀。


 そうだ……後一週間。


 僕はそう言われてもう、自分自身に残された時間がほとんど無いことを理解したのだった。

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