支える心
「そ……そんな……嘘だ……」
思わず膝をついてしまう。
信じたくなかった……信じられない目の前の光景。
さっきまで元気だった……あのケイさんが……
宙吊りになったケイさんはピクリとも動かずに――
「あ……うげぇ……」
「え」
違う。
動いている。ケイさんは……硬直していなかった。
見るとケイさんは首にかかった縄に手をかけて必死にもがいているではないか。
「え……け、ケイさん!?」
「は……はやく……たずけで……」
苦しそうにしながらも、ケイさんはなんとか体重が下にかからないように努力している。
僕は周囲を見渡す。と……転がっている椅子があった。
「こ、これだ!」
僕は慌てて椅子をケイさんに近くに持っていき、そのまま椅子の上に立ち上がる。
「ケイさん!」
そういって、僕はケイさんの身体を抱きかかえ、なんとか重心をその場で支えようとする。
「ぜぇ……はぁ……」
ケイさんは苦しそうにしながらもなんとか肩を上下させている。
「け……ケイさん……」
「……そのまま……支えてて……」
ケイさんに言われるままに僕はケイさんの身体を椅子の上で抱えたままの格好になる。
そして、ケイさんはゆっくりと自分の首にかかった縄を頭の上へと外した。
「け、ケイさん……」
その瞬間だった。ケイさんの身体が思いっきり僕の方へ傾いてきたのである。
「え、ちょ、ケイさん……うわぁ!?」
椅子の上ということもあり、僕はケイさんの身体を支えきることができず……そのまま僕のケイさんは椅子ごと後ろ向きに倒れてしまった。
「いたた……大丈夫? ケイさん?」
僕はそういってケイさんの方を見る。
するとケイさんは既に起き上がって、僕のことを見ていた。
「え……ケイさ――」
そう言おうとした瞬間、ケイさんは思いっきり僕の頬を平手打ちにしたのだった。