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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第七神
149/200

繰り返し

「え……琥珀……」


 僕は後ろを振り返ろうとした……しかし、できなかった。


 まるで何か見えない力で頭が全面に固定されているかのように、僕は首を……顔を動かすことさえできなかった。


「ふふっ……いけない人ですね。勝手に人の家に入って……人の部屋の日記まで盗んで……まぁ、あの女に唆された、ということで、賢吾のことは責めません」


 ……声は、間違いなく琥珀のものだ。だけど、声を聞いているだけで恐怖が僕のことを襲ってくる。


 まるで得体の知れない何かと会話しているかのような感覚だった。


「……なんで、ここに……」


「なんで? それはここが私の家だからですよ。自分の家にいるのは当然じゃないですか?」


「……僕達を……どうするつもりなの?」


「ふふっ……賢吾には何もしませんよ。もちろん、日記を盗もうとしたことは悪いことだと思いますが……賢吾には、私の気持ちを知ってもらいたいですし……」


 そして、しばらくの間沈黙がある。いきなり何も聞こえなくなった。


 ……琥珀はいなくなったのだろうか?


 それにしては身体が未だに言うことを利かないような――


「あの女には、いい加減死んでもらいますよ。私を守ってくれなかった、あの人と同じように」


 ゾッとするほど冷たい響きの声が、僕の耳元で聞こえてきた。


 そして、その瞬間、拘束が解かれたようで、僕の身体は自由になった。


 思わず僕はその場に尻もちを付いてしまった。


 全身汗びっしょりだ。そして、僕は周囲を見回す。


「え……ケイさん!?」


 ケイさんの姿がなかった。先程まで僕のすぐ近くにいたのに……


 その瞬間だった。


 ガタンッ、と、何かを蹴飛ばすような音が聞こえた。


 その音は書斎の方から聞こえた。


 僕は、琥珀の言葉を思い出す。


「私を守ってくれたなかったあの人と同じ方法……そんな……まさか!」


 慌てて僕は立ち上がる。そして、全速力で書斎へと向かう。


 書斎の扉が開いている……僕はそのまま書斎に飛び込んだ。


「ケイさん!」


 僕がその名前を呼ぶと同時に見た光景は……かつて黒田さんのお爺さんがそうであったように、天井の柱から伸びた縄に首をかけ、宙吊りになっているケイさんの姿だった。

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