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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第七神
139/200

異なる事態

 そして、その日も、学校ではとても授業には集中できなかった。


 琥珀が僕に対して最後に言った言葉……一緒に死んで、という言葉。


 あれは……間違いなく八十神語りの結末を示している。


 そして、それは僕には否応なく迫ってくる運命だと……


 かといって、諦めてしまっては意味がない。


 ここまで八十神語りに付き合ってきたのは、黒田さんを取り戻すためである。


 琥珀の言うとおりになってしまっては、意味が無いのである……


「……覚悟をきめる……しかないか」


 そもそも、今日は八十神語りの日である。


 放課後になって、僕は既に身構えていた。


 きっと、また琥珀が僕のことを迎えに来る……そう思っていた。


 しかし……


「……あれ?」


 いくら待っても、琥珀は姿を現さなかった。


 既に30分以上経っているが、琥珀は僕のことを迎えに来ない。


「……あれ?」


 琥珀の机を見てみると、既にカバンがない。


 ということは……既に帰ってしまったということだ。


「……どういうことだ?」


 僕は理解できないまま、とりあえず教室を出る。


 そして、僕は学校を出てしまった。


 ポケットには父さんから貰ったお守りと……琥珀が手渡してきた手紙がある。


 僕は今一度手紙を手にしてみてみる。


 ……普通の手紙だ。


 二つ折りにされている……開いてしまえばすぐに読むことが出来るだろう。


 しかし……こういうものというのは然るべき場所で読まないと大分不味いことになるというのは……なんとなく僕でもわかる。


「……とにかく白神神社に向かおう」


 そう思って、僕は一人、白神神社へと急ぐ。


 ……それにしても、なぜ琥珀は僕のことを迎えに来なかったのだろう。


 今までは全て僕を迎えにきていて、一緒に白神神社に向かっていた。


 つまり……今回は何かがいつもと違うということなのだろうか。


 そんなことを考えているといつの間にか既に白神神社の前にやってきてしまっていた。


「おーい」


 見ると、既にケイさんが階段の前に立っていた。


「ああ、ケイさん……どうも」


「ん。で、手紙は?」


「え? 持ってますけど……」


「まだ、読んでないよね?」


 ケイさんが疑っている感じでそう訊ねる。僕は当たり前だと言わんばかりに頷く。


「え、ええ。読んでませんよ」


「うん。それが正解。とにかく、境内の方行こうか」


 ケイさんにそう言ったのをきっかけに、僕達は二人で階段を登り始めた。


「えっと……ケイさん。番田さんは?」


「ん? ああ、センセーはまた調べ物だって。まったく……この肝心な時に何を調べるんだか」


呆れ顔で、ケイさんはそう言う。そして、その後、怪訝そうな顔で僕を見る。


「……そういえば、アイツは? 一緒じゃないの?」


「あ……え、ええ。琥珀は、今日は迎えに来なかったので……」


 僕がそう言うとケイさんはうーん、と小さく唸る。


「え……どうかしましたか?」


「……嫌な予感がするんだよねー。アイツ、また何か企んでいる気がする」


 ケイさんは眉間に皺を寄せてそう言う。


「……そ、そうですかね?」


「……あのさ、大体私が言っていること、当たるでしょ?」


 言われてみれば確かにそうだ……僕も嫌な予感を感じながら、ケイさんと共に境内への階段を登ったのだった。

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