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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第七神
136/200

判明

 そして、僕はケイさんと共に病院に戻ってきた。


「……で、そのお守りはいつから持ってたんです?」


 ケイさんは病室に着くなり、父さんにそう訊ねた。


 父さんは不思議そうな顔でケイさんのことを見る。


「え……あ、ああ。随分と昔のことだよ。賢吾にも話したが、私のお婆さんから……というか、アナタは……」


「いいから、質問に答えて」


 父さんは困り顔で僕のことを見る。


「あ、あはは……ご、ごめんね。友達がどうしてもその話を聞きたいって……」


「あ、ああ……そうだなぁ……まぁ、俺も詳しくは覚えていないんだけど……とにかく、お婆さんはこれを肌身離さす持っていろって……それで、時が来たら、自分の子どもに渡すようにって。俺自身もよくわかっていなかったんだけど……とにかく、今日、賢吾に渡すべき日だということはわかったんだ」


 ケイさんは父さんの話を聞いて何も言わなかった。深刻そうな顔でただジッと父さん……そして、僕のことを見ている。


「……お婆さんは、この村の人だったんですよね? どんな人でした?」


「え……どんな人って……特別な人間ではないよ。ただの――」


「ただの村人が、八十神語りを知っているのはおかしくないですか?」


 ケイさんがピシャリとそう言うと父さんは黙ってしまった。


「……なるほど。君は……八十神語りに関わっているんだね」


「ええ。息子さんがそれに巻き込まれてどうにかならないようにしている者です。で、なんでお婆さんは八十神語りを知っていたのですか?」


 父さんはそう言われて少し困ったような顔でためらっていたが、しばらくすると小さな声で言葉を発する。


「……賢吾が今持っているお守り……それは私の祖母がこの村にいた外国人にもらったものだが……八十神語りの全容は……その外国人に教わったらしい」


 それを聞いてケイさんは小さくため息を付いた。それから小さく父さんに向かってお辞儀をする。


「話をしてくれてありがとうございました。これ」


 そういってケイさんは父さんに何かを手渡す。


「……お守り?」


「ええ。ウチの神社のものです。アナタは今、自分を守ってくれるお守りを持っていない。今まで守ってくれたお守りを息子さんに渡したから……だから、それは今までのお守りの代わりです。息子さんが持っているものほどではないけれど、アナタを守ってくれます」


 そういって、ケイさんは病室を出ていってしまった。僕も父さんに挨拶してから、同じように病室を出る。


「大体、わかったわ」


 病院から出ると、ケイさんが言った。


「え……何が?」


「なぜ、白神が黒須君に固執するのか。どうして、黒須君の曾祖母が八十神語りを知っていたのか……そのお守りをくれた外国人が誰かも」


 そういって、僕は十字架のお守りを見てから、ケイさんを見る。


「それは……つまり……」


 ケイさんは小さく頷いてから、既に僕もなんとなく感づいていたことを云う。


「黒須君の曽祖父こそ……クロス神父その人よ」

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