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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
128/200

意図の所以

「……あれ、不味いものかな?」


 僕はケイさんに尋ねる。ケイさんは何も言わずに小さく頷いた。


 僕はそのまま書斎の中に入っていく。書斎は埃っぽいが……先ほどの食卓のような異臭は感じなかった。


 そして、僕とケイさんは机の前に立つ。


「……触っても大丈夫かな?」


「待って、私が……やる」


 そういってケイさんは古びたノートに手をのばす。そして、表紙の端を掴むと……そのまま頁を開いた。


 表紙をめくると……そこには文字がびっしりと書かれていた。


 紙自体がかなり古くなっているが……なんとか文字は読めるレベルだった。


「……これ、八十神語りのことじゃないの」


 ケイさんは信じられないという顔でそう言う。僕も文字を読んでみた。


「『我が村に伝わりし秘術も、黒田家の者のみに独占させておくのは惜しい。ならばいっそ、我が灰村家がそれを真似てしまえば良い。今の状態は灰村家は関わっているだけであるが、中心となれば、村人も灰村の家に文句も云うこともなくなるだろう。そうすればこの状態も脱することができるはずである。そうとなれば話が早い。明日から早速開始するとしよう』……このノートって……」


 ケイさんも僕も顔を見合わせていた。


 この文章は……おそらくだが……


「……灰村家の当主が書いた物……って感じね」


 ケイさんの言う通りで間違いないだろう。


「え……でも、灰村家は八十神語りを真似るって……どういうこと?」


 ケイさんは僕の質問に答えず、そのまま頁を捲る。すると、今度は見慣れた文字が僕の目に飛び込んできた。


「ウシロガミ様、カガミ様、ハコガミ様……これって……」


 それぞれの八十神語りの神様の項目に細かい解説が書かれている。そして、八十神語りの具体的な話の内容も……


「どうやら……マジで八十神語りを真似ようとしていたみたいね」


「で、でも! 真似るって……真似てどうしようとして……」


 僕がそこまで言うとケイさんはジッと僕の方を見ていた。


 僕もケイさんの両方の目をジッと見つめる。


「え……ケイさん?」


「そのまま顔を動かないで聞いて。黒須君」


「え……もしかして……」


 そして、ケイさんは悲しそうな顔で僕を見る。それから、小さく頷いた。


「いるわ。アイツが」


 僕は視線だけを思わず横に動かしてしまった。


 ケイさんの言う通り……僕とケイさんのすぐ真横……ほんの数センチの距離に、あの黒い着物の白髪の女性が立っていたのだ。

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