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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
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絶対絶命

「え……灰村さん……?」


 見た目は……確かに灰村さんに見えた。しかし、髪はそれこそ……まるで白神さんのように真っ白になっている。


 おまけに彼女は笑っているのだが……その表情はとても不気味に見えた。


「……え……け、ケイさん、この人は――」


「いやぁぁぁぁぁ!!!」


 僕はそう訊ねた瞬間、ケイさんは絶叫した。隣にいた僕は鼓膜が破れんばかりに、いつものケイさんからは信じられない程の声で。


「え……け、ケイさん?」


「いや……無理無理無理……」


 ケイさんはそう言いながら、僕と繋いだ手をギュッと握る。


 それこそ、僕を逃さないと言わんばかりに強く握ってきた。


 僕は今一度灰村さんらしき人物の方に顔を向けた。


 と、その人物はニンマリと細めた目を開こうとしていた。


 その瞬間、僕は直感的に不味いと思った。


 目を見てはいけないのだ、と。理由はなかったが、僕は理解した。


「ケイさん!」


 僕はそういって、未だに茫然自失状態のケイさんを無理やり引っ張って、そのままその人物の横を一気に通り過ぎた。


 ケイさんの手は握られている。そのまま玄関までの廊下を一気に走り抜ける……


 つもりだった。


「……え……な、なにこれ?」


 いくら走ってもすぐ近くにあるはずの玄関が見えてこないのだ。


 まるで長い廊下を走っているかのような……僕は思わず足を止める。


「ケイさん……これって……」


「無理……もう無理だよぉ……」


 と、ケイさんは完全にノックダウン状態のようだった。


 ……といっても、これでは僕も不味い。


 あのわけのわからない存在が今にもこちらに向かってくる……僕はまたしても直感的にそう思った。


「……ケイさん!」


 僕は片手で思いっきりケイさんの肩を揺らす。ケイさんは少し我に返ったようだった。


「え……あ、ああ。黒須君」


「……あれがヤバイ存在だってのは、ケイさんの反応でわかったから……これからどうすればいい?」


 すると、ケイさんはキョロキョロと当たりを見回す。


 そして、しばらくすると黙ってしまう。


「……ケイさん?」


「……あははっ……はぁ……ごめん。黒須君」


 そういって、ケイさんは顔を上げる。


 その目からはとめどなく涙が溢れていた。


「ごめん……全然わかんないよぉ……」


 泣きながらそう言うケイさんを見て、今の状況が相当不味いことを僕は理解した。

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