廃屋
そして、程なくして灰村家についた。
しかし、思わず僕達3人は絶句してしまった。
「……ここが、灰村家?」
思わず僕は声を漏らしてしまった。
灰村家は……完全に廃屋だった。
窓ガラスは割れ、壁は所々穴が空いている。
何より、玄関と思われる場所の扉はボロボロで、そこから暗い家の中が見えるようだった。
とても人が住んでいるような場所ではない……僕は直感的にそう思った。
「え……前来た時は、こんな……」
「……不味いな、これは」
そう言ったのは、番田さんだった。
そして、そのまま草が伸び放題の灰村家の敷地に入っていく。
「センセー!」
と、僕の隣から大きな声が聞こえてきた。
見ると、ケイさんが番田さんに大きな声で呼びかけたようだった。
「……ケイ君」
「せんせー。戻ってきて。ここは……私と黒須君で行くから」
ケイさんがそう言うと、番田さんは大人しく戻ってきた。
そして、番田さんは深刻そうな顔で僕とケイさんを見る。
「先に行っておく。ここは……入ってはいけない家だった」
「え」
思わず僕は声を漏らす。番田さんは辛そうに言う。
「……見れば分かる。これは……明らかに不味い思念が残っている家だ」
そういって、番田さんはボロボロの廃屋を今一度見る。
「君もわかっているだろう? ケイ君」
そういって、ケイさんを見る番田さん。ケイさんの方は……とても悔しそうに家の方を見ていた。
「……うん。いやぁ……マジで。騙されちゃったわけか」
すると、ケイさんはいきなり僕の手をギュッと握ってきた。
いきなりのことに、僕は驚いてしまう。
「黒須君。勘違いしないで。これは、アンタと私の命綱だから」
「え……?」
いきなり出てきた言葉に、僕は戸惑う。
「いい? あの家は白神……とかなり似ているけど、違う怨念が渦巻いている。この前はそれがうまく隠されていた……それは、私達を家に招くためだった」
「え……僕達を……招く?」
ケイさんは小さく頷く。
「八十神語りに巻き込まれている私達を、あの家に招いて、その呪力を家に浸透させる必要があった……あの女のために」
「あの女……灰村さんのこと?」
僕がそう言うと、ケイさんは悲しそうな顔をする。
「……これからあの家に行ってすることは、確認だけ。あの女は……たぶん、もう助けられない」
「え……ど、どういうこと? 意味が――」
「黙って!」
そういって、ケイさんは今まで見せたこともない顔で僕に怒鳴った。
僕はその時ようやく、僕の手のひらを握るケイさんの手が震えていることに気付いた。
「……一体この家があの女をどうしようとしていたのか……それを確認するだけ。私の予想が当たっていても……たぶん、これ以上不味いことにはならない。むしろ、問題はさっさと八十神語りを終わらせなきゃいけないってことになるから……」
そう言うと、ケイさんは今一度、僕の手をぎゅっと握りしめた。
「絶対、離さないで。離せばあの女とこの家が、アンタを取り込む。いい?」
「……わかった」
僕も納得した。今……ケイさんでさえ恐れる場所に、僕達は足を踏み込もうとしていることを。